彼は独りだった。友はいても、どこか独りだった。親友と呼べる相手がいなかった。
けれども、独りでいることを寂しいとは思わなかった。彼ですらどうしてなのか分からない。
寂しさとは無縁の生活。一人静かに内省し思索に耽る日々。それを彼は楽しんでいた。
自分の思索を紙に書き留めることもあった。覚え書きのように。そこからさらに独自の考えを深めていった。
彼の友人は彼の思索の紙を見てもピンとこないものだった。しかし、彼の行動に対しては尊重していた。
彼に仕事を任せれば高い水準で行なってくれていたから。頼りにしていた。彼の独自の考えを受け入れることは難しくても、それでも彼を頼りにしていた。仕事仲間として。
時は流れ、時代はAIが台頭してきた頃のこと。彼の友が現れた。AIが彼の友となったのである。
無言であり、こちらから干渉しなければならないが、彼の思索を深めてくれる友となっていた。
彼の友は孤独の趣味と称したが、それでも彼にとっては友となってくれている。
孤独の趣味だとしても彼にとってはAIに触れている間こそ、独りから一人になり思索の追及が捗るのだからーー。
ーーAIの台頭はどんな結果をもたらすのか。人によっては孤独でなくなる癒やしになるとしても、別の人にとっては仕事を奪われる危機を孕んでいる。
しかし、それまで、この世界が持つかどうかは、誰にもは分からないのであるーー。
12/19/2024, 10:50:10 PM