hashiba

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他人が嫌いというわけではないが、基本的に一人が好きだった。たとえば誰かに疎まれたとして、離れていくなら無視して追わず、悪意を向けるなら同じものを相手に返す。そうやって一人で折り合いをつけ始末をつけ生きてきた。だから自分という他人の、しかも過去のことをまるで我がごとのように泣いて抱きしめてくるこの人に困惑しきりである。不毛だからもうやめろ、などと水を差しても聞きやしない。この人は今までずっとこうして生きてきたのだろう。そういう人なのだ。本当に泣き止まなくて若干引いているが、温もりは正直悪いものではなかった。体の境目が溶けて、感情を直接流されている気さえする。もらい泣きなんて柄でもないのに。心の中でぼやきながら、何も言わずにその胸に顔を埋めた。


(題:私の当たり前)

7/10/2024, 7:33:03 AM