君が久しぶりに同窓会に顔を出すと聞いた時、僕は心の底から喜んだんだ。
でも、君と僕は仲が良いわけではなかったから、興味がないふりをする必要があった。
「そうなんだ。あいつも来るんだね」
なんて言いながら、他の参加者に対する対応と同じか、少し冷たいくらいの薄い反応をしたんだ。
心の中の興奮が滲み出ないように必死だった。
だって僕はずっと君に会いたくて仕方なかったんだ。
君はいつも気だるげに教室の席に座っていたね。
授業だって聞いているのかいないのか、提出物だって満足にしていなかったと思う。
クラスの中心人物ではなかったし、かと言って遠巻きにされていたわけでもない。
同い年のはずなのに、どこか年齢が上のような雰囲気を纏っていた。
そうかと言えばふざけたりはしゃいだり。
どんな人間も多角的であるけれど、君はその範囲が広く感じられたんだ。
だから、僕は話しかけたくて、君の世界を知りたくて仕方なかった。
けれど、勇気がなくて関係を深めることなく卒業してしまった。
友人からの又聞きで君は海外で夢に向かって挑戦していると知った時は、自分の見る目に感動したんだ。
やっぱり君はひとかどの人物なんだって。
それを教室の中だけで見抜いた僕は洞察力の優れた人間なんだって。
君の頑張りに勝手に便乗しているだけで、恥ずかしいことだけれど。
でも、それを知っていつか君に会えた時は僕も自分の満足する僕になっていたいと思ったんだ。
だから、けっこう努力してきた。
なりたい自分を設定して、そのために行うべきことをコツコツやってきたんだ。
英語も喋れるようになったし、ジムに通って筋肉もつけた。
彼女もできて、関係が続くように話し合いと思いやりを大事にしている。
いわゆる〝大人〟になっていると思う。
君に話しかけてもいいぐらいの人間になったと思う。
君に会いたくて、話したくて目標にしてきたんだ。
友達になりたいなんてたいそれたことは言わない。
あわよくば写真の一枚でも一緒に撮りたいけれど、無理なら全然かまわない。
この気持ちは何だろう。
何度か考えたけれど、わからない。恋慕かと思ったが少し違う。
君が男だってことも関係してるかもしれないけれど、そこはあまり重要じゃない。
彼女に思うような愛しさが全然湧いてこない。
君に対する感情は名前をつけることができない。
憧れ、心酔、尊敬、どれもしっくりこない。
そして名づけることはさほど重要じゃない。
ただ君に会いたい。
きっときっと話しかけてみせるから、その時はどうか僕を見て笑顔を見せてくれないか。
1/19/2024, 2:59:22 PM