桜が咲く時季にだけ現れるあの人に会うために、南から北へ旅をする。「君も難儀な人だね。よりにもよって私だなんて」と笑うだけで決して突き放しはしない、優しくて残酷な人。「そう思うのなら、連れていってちょうだいよ」「それは困ったなあ」 彼の通った直後に桜が咲き、彼がその土地から離れると散っていく。 桜の季節しか会えないあなたとの一年に一度の逢瀬。この旅が昨年より一日でも長く続くようにと祈りながら、終わりを知らないふりをして歩いていく。【桜散る】
4/17/2023, 11:22:04 AM