ほろ

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ビリビリに破られた紙が、下駄箱のスノコの上に落ちていた。
「ラブレターでも破ったのか……?」
私は、紙片を1枚ずつ拾う。何が書かれているかは分からない。辛うじて、『ごめんね』『私 より』『生』の字は分かる。
ラブレターだとしたら、なんとなく内容は想像できる。

私より良い人がいるだろうからごめんね、みたいな。

「あれ……? でもそれって、ラブレターじゃなくない……?」
それに、それを破く意味が分からない。
貰った側が怒って破いた? こんな、誰かに手紙を拾われて解読される可能性のある場所で?
私は、紙片をパズルのように並べた。内容が気になる。もし本当にラブレターだったとしたら、あげた方と貰った方には悪いけど。

少しずつ紙片パズルが完成していく。
罫線が引かれただけの、白い便箋。いや、ノートを破いたのかも。とにかく、シンプルなそれに、並んだ言葉。

『2024年2月15日の私、これを見たらすぐに逃げて。絶対に捕まらないで。詳しいことを言えなくてごめんね。生きて。 10年後の──』

「10年後の私より……?」
どういうことだろう。捕まらないで、とは誰に?
じ、と見ている間にふと気付く。この手紙を読んだだけでは、内容の意味が分からない。だから、破いても意味がない。意味があるとしたら、恐らくこの手紙の主の10年前である私と、"私を追っている誰か"にしか。

ハッとして、外靴に履き替えるのも忘れて昇降口へ向かった。しかし、遅かった。

「ざんねんでした」

手紙を破いた犯人が、ニタリと笑って私の行く先を塞いだ。
ごめん、10年後の私。ちょっと間に合わなかったかも。

2/15/2024, 1:46:39 PM