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「開けないLINE」


いつか開こうと思った君のLINE。
どうしても、開けなかった。

これは、あの日、君が送ってきたものだったから。


携帯を見ていた。
特といってすることもなく、ただ寝転がっていた。
LINEを開いて、一件通知があることを確認する。
毎日のルーティーンだ。いつから始めたのだったか。

否、それははっきりと覚えている。
あの日。
君がいなくなった次の日からだ。

「ごめんなさい。…」
そう、通知が来ていた。


君には、誰にも言わず、失踪した。
家族にも、クラスメイトにも、僕にも。
だれも何でいなくなったのか、何処へ行ったのかすらわからなかった。
警察も介入してくれたが、一向にして行方は分からなかった。
学校でも、いじめはなかった。
それは僕が一番知っている。
だからこそ、意味が分からなかった。

なにも、分からなくなった。
どうして僕に言ってくれなかったのだろう。
なぜ消えてしまったのだろう。


君から、LINEが来ている。
それを知ったのは、何も信じられなくなって、不登校気味になっていたあの日からだ。
誰か、何か言ってくれないだろうか。
確かに、君の失踪のせいでクラスLINEは荒れていた。
だけど、そんなことはどうでもよかった。
ただ、ニュースとかになっていないか、それだけが知りたかった。

そんな時、君から通知が来た。
「ごめんなさい。…」
長かったからか、そこからは読めなかった。
開きたかった。

開けなかった。

君は僕に何が言いたいのか。
もしかしたら、何か重要な事を言っているのかもしれない。
でも怖かった。
もし、何かあったら。

それだけで、開かないことを決めていた。

今は違った。
もし、僕に行方が届いていて、それを隠しているように見られたら。
僕のせいで捜査が難航しているように思われたら。
それすらも怖くなっていた。


なぜか、今日は、今は開きたいと思った。
君の送ってきたものを知りたかった。
何故だかは分からない。好奇心が膨らんだ、だけかもしれない。

ただ、押すだけだった。その操作すら、怖がっていたのに。
今日はしたくなった。

震える指で、押す。
画面が変わり、内容が開かれる。

長めの文章を、目で追い続けた。

「ごめんなさい。急にいなくなって。
家族にも、君にも言わず。
どうしても、いなくなりたかった。ただ、それだけだったのかもな。

理由ぐらいは誰かに言ってもいいかもしれない。
そうも思った。
でも、ごめん。いえないな。
ただ、ごめん。そうとしかいえない。

でも。

また君に会いたい。」


そう、綴られていた。

9/2/2023, 9:48:29 AM