午後最初の授業らしく、黒板には大文字と小文字が入り混じったアルファベットの式が所狭しと埋め尽くされている。しかし夕霧の目は、化学式でも教科書でもなく、窓の外を映している。
今年最初に降り出した雪を見ているのではない。粉雪の先には東校舎、今夕霧が授業を受けている化学室の斜め下の階には二学年上の教室が一列に並んでいる。日差しが入っってくる天気でもないのに、どの教室もカーテンを閉めてしまっている。ペン先を前から順に動かし、五回目で止めた。その時、カァという甲高い鳴き声と共に閉め切っていたカーテンが開き、夕霧の眼前に眩い光が直撃した。
1/8/2024, 2:54:20 AM