月下の胡蝶

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お題《太陽の下で》


 
花の香りに包まれた揺り籠。


天窓から零れ落ちる光。



大きな窓から見渡せる庭には、陽光を受け煌めく薬草の庭。奥の方には果樹園もある。日頃から丁寧に世話をされているのだと見ればわかる、生命力にあふれた豊かな庭だが――ただ、その姿を一度もまだ、見たことがないのだ。



その代わりに。いつもテーブルに、手紙が置いてあった。



《クロックムッシュ、木いちごのパイを今日は焼いたから庭のカフェスペースで食べて》


《今日は星がたくさん流れる。庭に落ちた星の欠片を集めておいて。明日をお楽しみに》






とりとめのない、日常の手紙。





私は今日も筆をとる。



私の知らない誰かへ。







11/25/2023, 1:48:32 PM