いろ

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【また会いましょう】

 血の混じった細い息を吐き出す貴方の冷たい身体を、腕の中へと抱き寄せる。私を庇うなんて本当に愚かな人だ。不死の権能を持つ私であれば、ドラゴンの爪に身体を抉られたって死ぬほど痛いだけで死ぬことはないのに。
 それでも私の無事な姿を瞳に映した貴方の口元が、安堵したように柔らかく綻ぶから。馬鹿じゃないのという罵倒も、溢れ出しそうになる涙も全て押し殺して、ただ口角を上げてみせた。
 貴方の髪をそっと指で梳いて、血に濡れた唇に口づけを落とす。
「いつか、また会いましょう」
 不死たる私に死後の世界の概念はない。交わした約束は、きっと永遠に叶うことのないものだろう。だけど目を閉じた貴方が幸せそうに微笑んでいたから、きっとこの優しい嘘が私たちの正解だったのだ。

11/13/2023, 9:50:55 PM