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【遠い日の記憶】

僕は「怪物」だ。
正確には「不老不死の呪いを掛けられたニンゲン」だった者。

20代前半で身体の成長は止まり、数百年経った今でもニンゲンだった頃のように若々しいまま。

子供の頃はアニメや漫画に出てくる不老不死系の強キャラに憧れて自分もなりたいと強く願っていたが、実際になってみると「寿命」というものが恋しくなった。
限られた時間の中で足掻く人生ほど輝いているものはないのだと理解させられた。

出会いがあれば、いつか必ず別れが来る。
ニンゲンだった頃の知り合いは勿論、怪物になった後に知り合った者たちも皆して僕を置いて居なくなった。
僕はいつだって「見送る側」なのだ。
どんなに死にたくても死ねない。
一生孤独に耐え続けなければいけない。
僕が憧れていたキャラたちもこんな気持ちだったのだろうか。

「不老不死」という名の呪いの解呪方法はまだ見つかっていない。
そりゃそうだ、未だに前例を見つけられていないのだから。
僕以外の元ニンゲンの不老不死の怪物と会えればまた違うのだろうけど、数百年経ってもまだ1人も見つけられてないんだから居ない気がする。

「あんなことしなければ良かった」

僕はあの日のことをずっと後悔している。
僕が願わなければこんな思いをすることは無かった。
今日も「怪物」は馬鹿なニンゲンだった頃の、遠い日の記憶を夢見る。

7/18/2024, 3:18:28 AM