Ringo

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赤い糸と聞いたら皆は何を思い浮かべるだろう
運命の赤い糸?あの歌手の歌?それともゲームのアイテム?

大半の人はロマンチックに運命の赤い糸と答えるだろう
けど私は運命の赤い糸なんて答えないし、そんなもの信じない。
私は由緒正しい家柄の一人娘で産まれる前から親同士が決めた許嫁がいるらしい。
自由恋愛なんて許されず小学一年の頃、好きな人が出来たなんて言えば次の月にはその子は転校した。
その頃からドラマや漫画のような運命の赤い糸なんて信じなくなった。

高校生になり周りでは誰と誰が付き合ってるだの、あの先輩かっこいいだのそういう話ばかり
けれどそういう私もお年頃、唯一の楽しみがある
それはお昼休み、いつも4人で推しやメイクなどの話に花を咲かせる
そしてゆっくり彼を見ることが出来る大切な時間だ。

初めて彼を見かけたのは入学式から1週間が経った時
移動教室で廊下を歩いてた時に仲間内でワイワイやってる彼を見かけた。
話したこともなければ同じクラスでもないが何故かその時から廊下ですれ違う度に自然と目で追っていた
小学校のあの時以来好きな人を作らなかった私が久しぶりに恋をしたのだった。

入学してから半年、今のいままで彼と話したこともない
ただ遠目から眺めるだけ。
でもそれでいい、万が一付き合えたとしても両親にバレないようにすることは到底出来ないだろうし
顔も知らない許嫁がいるから付き合ったとて未来がない
だから学生時代のいい思い出になるよう彼に私の気持ちを知られないまま卒業しよう、その時まで久しぶりの片思いを楽しもうと決めたのだ。

夜、食事をしていると父が
「今週の土曜日は昼から大事な用事があるから、早く起きるんだぞ」
と言ってきた、大事な用事なんてあったか考えていると
「あなたに許嫁がいることは話してたわよね?
その人と顔合わせするのよ。大丈夫、向こうの家の人達は気さくな方ばかりだし、きっとその人のことも気に入るわよ」
母がとても嬉しそうに話す
あぁ、ついに来てしまったかと思った。
話には何度か聞いていたが家柄の話ばかりで、相手の年齢も知らないし写真すら見たことがない
そんな状態で大丈夫と言われてもこちらとしては不安でしかないが、両親の言うことは絶対なので
『わかりました、準備しておくね…。』
…とても憂鬱だ

土曜日、約束の日、そして私の片思いが終わる日
今までは許嫁のことを何も知らなかったから誰にも言わず自分の心の中で片思いを楽しもうと思っていたが
知ってしまったらさすがに浮気をしているみたいで気が引ける、だからこの日顔合わせが終わったらきっぱり彼の事は忘れようと決めた。

少し緊張しながら座敷で両親と待っていると襖からカタッと音がした
どんな人か想像しながら無礼のないように挨拶をする
『お初にお目にかか……り…ます…。』
顔を上げるとそこにはいつもの制服とは違い、着物を着ている彼がいた
「はじめまして。って言っても、同じ学校でしたね。」
運命の赤い糸なんて信じないと決めていたのに…。

6/30/2023, 1:54:54 PM