古井戸の底

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私たち、ずっと友達でいようね。
小学時代、友達がそう言っていた。中学卒業が近づいたあたりで、彼女と学校以外で会う機会が減った。遊びに誘っても断られた。理由は決まって彼氏とのデートだった。
人間関係における永遠は絵空事だと、愛寧は思っている。人の縁は、いつかどこかのタイミングで切れる。女子同士の友情は特にあっけないもので、どちらかが恋愛に目覚めるとほぼ確実に消滅する。相手がぽっと出の異性を優先して、自分の元から去ってしまう。

空閑に告白されてから、明日でちょうど一週間になる。まさか自分が恋愛する側に立つ日が来るとは思いもしなかった。彼のことは嫌いじゃない。共通の話題もあって、気楽に過ごせる。何なら、心の片隅で期待していた自分もいる。
しかし、空閑の人気は高い。多くの女子が空閑に熱視線を送っている。それだけ彼との縁を切られやすい。
スマホの通知音が鳴った。
『お疲れ。明日一緒に帰れる?』
空閑からポップアップでメッセージが届いている。告白の返事を催促されている気がした。このまま断って幼馴染のままでいるか、受け入れて付き合うか。
愛寧は空閑のチャット欄を開き、OKと文字の入ったスタンプを送った。
『この間の返事、ちゃんとしようと思う』

【永遠なんて、ないけれど】

9/28/2025, 11:11:42 AM