わたしは
どうぶつのおいしゃさんです
どうぶつをたすけたくて
すこしでもくるしみをとりのぞきたくて
おいしゃさんになりました
でもときどきおもうのです
これがほんとうに そのどうぶつにとって
しあわせなのかと
にんげんの エゴなんじゃないかと
こちらのかんがえを
おしつけているだけなんじゃないかと
きっとえいえんに
こたえはでません
でもつねに かんがえ なやみつづける
それがわたしに かせられた
かだいなのだと おもっています
いま まどぎわでねている
ねこにはんしゃする
逆光がまぶしい
どうぶつのおいしゃさんは
つらくて かなしくて くるしい
でも なやみつづける
この逆光に まけないように
それがどうぶつにたいする
わたしのゆいいつの せいいだから
こどもがねむると とてもしずか
おとながねむると とてもしずか
ねこがねむると とてもしずか
つきがねむると とてもしずか
きみのおおきな かなしみは
きみといっしょに
よるのしじまに とけていく
わたしだけは ねむらずに
きみのおおきな かなしみの
ゆくさきを みつめていよう
だからおやすみなさい
かなしみをうしなった
きみがねむると
もっとしずかになる
おやすみなさい
きっとあさには
よろこびがやってきて
よのなかをうるさくするだろう
だから いまはねむって
おやすみなさい
おててをつないで
あるいていたのに
もうそんなところに?
おててをつないで
ジャンプしてたのに
どこにいったの?
おててをつないで
…ほんとうにつないでいたかな
すごくだいじだったのに
すごくだいじだったから
さみしいよ
わたしがこのよをはなれるときは
またおててをつないでいてね
おててをつないで
あるいていたのに
小学生の頃
私は鍵っ子でした。
両親が帰ってくるまでが
すごく寂しくてね。
一人っ子だったし。
団地だから動物も飼えなかったし
いつもベランダから空を見て
飛んでいる妄想をしていました。
ある日、すごく嫌なことがあって
その嫌なことがなんだったかは、
忘れちゃったんだけど(笑)
ふと、飛べるんじゃないかって
ベランダから飛んじゃったんですよ。
そしたらなんと
ふわっと体が浮いて、
本当に飛んじゃったんです。
背中を見たら、翼が生えていました。
そこからはあんまり覚えていません。
以上がAさんから聞いた話です
Aさんは両親からネグレクトされており、
2週間もの間、家から出られなかったそうです。
今は精神科に入院されています。
ぼくはこのエピソードがきっかけで
医者を辞めようとおもった。
ひどい女だ。
きもちわるい。
自分のやってること、わかってるんですか?
ばーか。消えろ。
いろんなにんげん
いろんなにおい
いろんなかたち
いろんなおもい
みにくい
きたない
あさましい
なんてひどい いきものなんだろう。
きずつけていためつけてくるしめて
あいてがうごかなくなったら
やっと じぶんのやったことにきづく
いったい なんにんころしてきた?
ちょくせつ やってないから
じぶんが あいてをころしたことに
きづいていない
ことばは
いともかんたんに
ひとをころす
これからもきっと
ぎせいしゃはふえる
なんてきたないみにくいあさましい
いきものなんだろう
いつからにんげんは
じぶんのことばに
せきにんをもたなくなったのだろう
ことばは
しゅうだんによって
ひとりをころすためにあるのではない
ひとりをすくうためにあるべきだろう
ことばにせきにんをもたない
かれらによって
あとなんにん
いのちをおとすのだろう