小学生の頃
私は鍵っ子でした。
両親が帰ってくるまでが
すごく寂しくてね。
一人っ子だったし。
団地だから動物も飼えなかったし
いつもベランダから空を見て
飛んでいる妄想をしていました。
ある日、すごく嫌なことがあって
その嫌なことがなんだったかは、
忘れちゃったんだけど(笑)
ふと、飛べるんじゃないかって
ベランダから飛んじゃったんですよ。
そしたらなんと
ふわっと体が浮いて、
本当に飛んじゃったんです。
背中を見たら、翼が生えていました。
そこからはあんまり覚えていません。
以上がAさんから聞いた話です
Aさんは両親からネグレクトされており、
2週間もの間、家から出られなかったそうです。
今は精神科に入院されています。
ぼくはこのエピソードがきっかけで
医者を辞めようとおもった。
ひどい女だ。
きもちわるい。
自分のやってること、わかってるんですか?
ばーか。消えろ。
いろんなにんげん
いろんなにおい
いろんなかたち
いろんなおもい
みにくい
きたない
あさましい
なんてひどい いきものなんだろう。
きずつけていためつけてくるしめて
あいてがうごかなくなったら
やっと じぶんのやったことにきづく
いったい なんにんころしてきた?
ちょくせつ やってないから
じぶんが あいてをころしたことに
きづいていない
ことばは
いともかんたんに
ひとをころす
これからもきっと
ぎせいしゃはふえる
なんてきたないみにくいあさましい
いきものなんだろう
いつからにんげんは
じぶんのことばに
せきにんをもたなくなったのだろう
ことばは
しゅうだんによって
ひとりをころすためにあるのではない
ひとりをすくうためにあるべきだろう
ことばにせきにんをもたない
かれらによって
あとなんにん
いのちをおとすのだろう
だれかのために なるならば
このふくを おいていこう
だれかのために なるならば
このかみを おいていこう
だれかのために なるならば
このゆびを おいていこう
だれかのために なるならば
このめを おいていこう
だれかのために なるならば
このしんぞうを おいていこう
だれかのために なるならば
ならばわたしは だれかのために
ためになるために いたのならば
わたしはなんのために いるのだろう
だれかのために なるならば
わたしはわたしを おいていこう
だれかがわたしに
そうしたように
いのちがそうで あるように
あついあつい
汗がどんどん湧き出してくる
たまらず水筒のなかのこおりを頬張る
あまりのつめたさに、
最初はつめたいとかんじなかったが
しだいにつめたさを感じていった
あついあつい
あついあつい
雨の少ないこの地域にも
何ヶ月ぶりに雨の予報だろう、と
祖父は歯の抜けた笑顔で言っていた
そうか
雨が降ったのは久しぶりなんだ。
どのくらいのどがかわいていたのか
もうわからなくなっていたのだ
僕が祖父も祖母もころしてから
すっかりずぶ濡れだったので
雨にも気が付かなかった
あついあつい
あついあつい
外には雨が降り続いている
あついあつい
あついあつい
あついあついあつい