『暗がりの中で』
東北大会
結果発表を満足した気持ちで聞き終え
全員で帰ろうと外へ出たものの
我がチームのバスがいない
会場近くに来ることが出来ず
下車した駐車場にいると言う
…何処にあるのか分からない…
総勢60人近くのこの団体を
この暗がりで移動させる訳にもいかず
選抜2年生の4人と3年生の部長副部長が
駐車場を探しに行く
男女をペアにして3隊に別れた
私とペアになった彼は直ぐに走り出した
ヘッ?!
と思っていると
植込みらしき方から囁かれた
「なぁんだ、この奥じゃないか
呼んでこようぜ、みんなを」
あれ、先輩より頼りがいがあるコイツ
街頭が無くてそこは真っ暗だった
その為か?
彼にドキドキしてしまった
みんなを呼んでる声が
ステキだなって思ってしまった
暗がりの中って…
恐れか?まやかしか?
しょうもない話なんだが
新しいケトルがほしい
新生児が家にいる事が増え
ミルクを作る機会が多くなったので
使いフルされた湯沸かし器では良くないかな
と思い買い替えた
それが半年前
使い始めだからか
嫌なニオイがする
重曹やクエン酸でつけ置きなどしてみたが
やっぱり臭う
体に悪影響は無いらしいが
大好きなアールグレイを淹れると
ガッカリしてしまう
ボーナスが出たら
新調しようかな
お気に入りのアールグレイの
紅茶の香りをどうしても楽しみたいし
ーーー紅茶の香ーーー
あ の日を忘れない、貴方との初対面
い つの間にか私のお腹の中でね
こ んなに大きく育っていてね
と びきり大きなスイカが出たかと思ったよ
それが貴方の
ば あすでぃ
ーーー愛言葉ーーー
56歳になるサチコは
誰にでも人当たりのいい
頼りがいのあるオバちゃん
朗らかな笑い顔
ドーンと何でも引き受けてくれる
おおらかさ
ポジティブ思考
だから男女問わずお誘いが多い
居酒屋を営む糖尿病高血圧の旦那と
生まれつき障害を抱えて一生車椅子の
中学生の長女が家族
誘われても
お付き合いできないわけがある
旦那と長女を放っておく事は出来ない
…と、自分に思い込ませ
誰とも深く付き合う事は無かった
友達を作る事がサチコは
怖かった
朗らかさ
おおらかさ
ポジティブ思考は
仮面なのかも知れない
と。
ーーー友達ーーー
部長を好きだって事は
一年の頃から皆に知られていた
姿を見るたびに
キャッキャッしていたから
OB訪問で練習指導に来てくれると
跳ね上がるほど喜んだ
そんな自分も三年生
オトナになり威厳も身に備え
OB訪問の元部長が来ている噂を聞いたとて
ホイホイ見に行かないで
ここで一人で自主練をする
ーーー行かないでーーー