放課後
私が部活で使っている美術室は、校舎の一階にあった。隣はテニスコートで、私の好きな人が部活の練習をしている。
美術室のカーテンを開け、テニスコートが見える位置に、イーゼルを立て掛け、油絵を書く。
独特の揮発油の香り。
「放課後」は、私にとって、特別な時。
カーテン
私の家には一箇所、開けたことのない「カーテン」がある。
開けたらどんな景色が広がっているのかなんて、考えたこともなかった。
きっと、すぐ隣の家があって、光も何も、入り込まないから、開けたことがない。
それだけのことだろう。
今日は、家に誰も帰ってこない。
私、一人。
夜中に、思い切って、そのカーテンを開けてみよう。
3、2、1。
窓に人の姿が映った。
何だ。私か。と思ったけど、違った。
あなたは誰?
相手は私に向かって手を伸ばし、誰もいない部屋に、カーテンを引き直す音が響いた。
涙の理由
今日使っているSNSから、彼のアカウントが消えているのを発見した。
気分転換しているみたいだったけど、そんな繋がりが嫌になったのかも。
私は、彼がどこで何をしているか知らないし、彼が誰だかも分からないけど。
彼がネットから消えたくなるほど、流している「涙の理由」を聞いてくれる存在が、リアルで側にいればいいなとは、思っている。
私が会うことは、もう二度とないだろうけど。
ココロオドル
自分はもう何者にも揺り動かされないと思っていたのに。
貴方と同じ時間を過ごすだけで、ひどく心が揺り動かされる。
初めて食べたものではない。
初めて聞いた音ではない。
初めて触って感じるものではない。
初めて見るものではない。
私の周りに溢れているありふれたものなのに。
貴方と一緒だと
ココロオドル
束の間の休息
毎日持ち主の掌の中にあって、常に操作され、休む暇がない。
私の隣から、持ち主の寝息が聞こえてきた。
束の間の休息。
私も画面を暗くして、明日に備えて、休むことにしよう。
忙しい毎日だが、持ち主の掌の中は、とても温かく、落ち着くのだ。