「たまには、ね」
自分を甘やかす魔法を掛けてBARに寄り道
「お嬢さん、一杯だけご一緒してもいいかい?」
素敵な王子様に出会えて
夢心地になって
魔法が解けて、午前0時
(待って待って、誰よ、この人!!!)
知らない男と裸でベッドを共にしている現実に
唖然呆然、おまけに愕然
#たまには
大好きな君に「大好き」って言えないのは
なんでだろう
髪にポンッて手を置いただけで……
「またチビとかデブとか揶揄うつもりでしょー!」
「ふんっ」
ほらね
顔、真っ赤にしてスゲェ可愛いのに
憎まれ口にあっかんべーで返しちゃう
#大好きな君に
(間違いない。オレには見えたんだ)
荒波に揺れる船上で航海士は望遠鏡をギュッと掴んだ
「せーんちょ、脂汗も程々にして下さいよー。
ギトギトネバネバ、うはぁ、加齢臭も混ざって。あーあ」
「うっさいわ! 脂汗も出やしねーよ。
遭難で暗礁地帯で沈没ルートまっしぐら、右も左も絶望で
全部干涸びてるぜ」
「航路が見えた、と言ったら潤います?」
「なんだと?」
「たった1つの希望 (北極星) が
オレ達にウィンクしてましてね……。
無視するには惜しいくらいのとびきりの美女なもんで、
身綺麗にしませんと秒でフラれます」
「は、ははっ! それを早く言え航海士! して方向は?」
航海士は迷いなく右を差す
「涎が出らぁ。美女を抱きに行くぞ、面舵いっぱーい!」
#たった1つの希望
「いいですか?
ちゃんと服用量を守って『現実逃避』を飲んで下さいね」
「わかりました」
「眠くなる成分もありますので乗り物の運転は控えるように」
「はい」
「副作用が気になるようでしたらご相談下さいね」
「あ、あの、どんな副作用があるんですか?」
「稀に意識がなくなって精神状態も悪化しますねー」
ゴクリ……
思わず唾を飲み込む。
処方されたばかりの『現実逃避』を心の中にしまうタイミングで、薬剤師さんはにこやかに「お大事にどうぞ」と言った。
#現実逃避
(君は今……◯◯してる頃だろうか)
そう思いながら過ごす恋愛に、僕は今、
君を好きになってよかったと幸せを感じている
#君は今