木漏れ日が地面の上で揺らめいている
　……風？
　見上げれば木の上に子猫を抱えた男子生徒


「こらこら常習犯。きみはもう三年生なんだぞ？
今日の遅刻は猫の所為かしら？」

「まさか。猫はおまけ、先生に構われたいのは俺だから」


　ひょいっと木から飛び降りて
　笑う彼の猫っ毛に葉っぱ


「先生のこと好きなんだって」


　爽やかな木陰で、
　さわさわと揺れる私の気持ち


#揺れる木陰

　平日の午後
　出社するために電車に揺られていると

「ママ……行かないで……」

　隣の席で寝ている小学生の寝言が聞こえて
　思わず頭を撫でてしまう

「私の娘も天国に行かないで欲しかったな……」

　生きていたら同じくらいの年齢で
　きっと、同じようにランドセルを背負っていた


#真昼の夢

　好きな人と見上げる大輪の花火
　花火の音と心臓の音が、同時に大きく響いていた

　……だから

「キスしていい？」
「え！？ あ、う、うん」

　小さな声ひとつで
　手に持ったカキ氷が一瞬で溶けてしまうくらいに
　全身が熱った


#夏

「プロフィールが埋まらねー」

　初期装備のまま
　マッチングアプリをインストール


#冒険

(マジか……)

　腹痛でトイレに駆け込んだまではセーフ
　大をした後で
　トイレットペーパーが切れてるのは完全にアウトだ

　人の話し声に合わせて
　トイレットペーパーの芯を投げた

(頼むから、届いて……)

　俺の汚ケツにトイレットペーパーを届けて！


#届いて……