手のひらに
ひとひらの花弁

葉桜に囲まれて
隣には失恋したばかりの後輩くん

心躍る春は
終わるのも早い


「季節は巡るものだしね」


後輩くんに訪れる春
私も一緒に迎えたいよ……って、脈はないか

慰める先は
桜なのか、後輩くんなのか、私なのか

心に
ひとひらの涙


#ひとひら

「そんなに笑わないでよ。
誰かがイイネって認めてくれる小説を
いつの日か、書けるようになるのが夢なんだから」

高みを目指して努力して
1分1秒、朝昼晩、365日の積み重ね
そういうのが
夢へ！の最短距離なんだってば


#夢へ！

「長命寺だ！」
「絶対に道明寺！！」

関東生まれの彼女と、関西生まれの俺
どっちの"桜もち"を購入するかで揉めに揉めて
決着が付かなかった

お花見デートしたかったのに
桜より先に恋が散った


#桜

天が雨を降らすのと人が涙を流すのは
「予防線」
ヒビが入って壊れてしまう脆さを
今日じゃなくて明日、明日じゃなくて数年後まで……
慈しむように受け止めていかなくては
恐らくは、生きて行けない


#涙

「お待たせしました、味噌ラーメンです」
「うっまそー！いただきます♡」

熱々のラーメンも店員さんの笑顔も
曇りから晴れ

「？」
「あ、いえ、すみません……！
ウチのラーメン美味しそうに食べて下さるのが
いつも嬉しくて」

眼鏡からコンタクトに変えた
花冷えの日

「いつも？」
「あ、その、好きだなって」

視界が開けて、鮮明になって、恋が見えるなんてね


#曇り