寒いー!寒いー!と言いながら
缶ビールをぐい呑みして
オリオン座を見上げながら歩くのも
今年で何年経ったかな
「来年の冬は一緒にならない?」
「えー?」
「ん、なんでもな〜い」
鼻がちょっと赤くなったのは
ビールと寒さの所為にしとこーっと
#冬は一緒に
彼女のお喋りはとても長い
30分でも1時間でも「聞いて聞いて〜」と
楽しそうに話す
他の人なら『くだらない』って
片付けてしまうだろう話の内容だと思うけど
俺は
その"とりとめのない話"を伝えようとする
彼女の顔も声も好き
それにね
"とりとめのない話"に結論を導き出せるのは
理路整然とまとめられる俺の
得意分野なんだ
#とりとめのない話
「たぶん風邪ひいた…」
子供の頃から嘘を吐いて甘えるのが
得意だった息子が
「あぁ、うん大丈夫だけど…ありがと」
大人になったらなったで
彼女に甘えている
どこまでも可愛いヤツ〜て思うのは
親バカだから?
-2nd story-
"バカは風邪ひかない"と言うけれど
「ほぉらね、風邪だ風邪だ!
バカじゃないって証拠になるのかなぁ?
ふっふっふ〜遠慮なくお世話するといいよっ」
超弩級のバカは次元が違うのか
風邪を寄せ付けるらしい……(げっそり)
#風邪
明日の天気は『雪』
東京に降る雪は稀なこと
「大丈夫だよ。必ず会いに行くから」
『電車や飛行機で困るよ?無理しないくていいのに〜』
「やーだよっ」
遠距離恋愛になって初めての冬
彼女との約束を楽しみにして
目覚まし時計を
1時間早めにセットした
#雪を待つ
17時に
駅前のイルミネーションが点灯して
18時になると
たぶん待ち合わせ
20時過ぎて
スマホをバッグにしまい
21時…
ストールを寒さに合わせて巻き直すと
23時ちょうどに
イルミネーションは消灯した
「バイト終わりに買ったケーキなんですけど
よかったら食べます?」
立ち尽くして動けないそのひとが
イルミネーションより目に映り
泣かないで欲しいと声を掛けてしまったXmas
#イルミネーション