部屋の片隅で
スマートフォンを片手に
顔を真っ赤にしながら一生懸命に
誰かと話す娘を眺める
「もうすぐクリスマスだもんね」
誰と話していたの?だなんて
野暮なことは訊かないよ
イルミネーションみたいな
煌びやかで優しい恋をしなさいね
-2nd story-
部屋の片隅で震える子猫
「お…おいでおいで〜。怖くないからっ」
猫は飼うなと反対した手前
家族が寝静まってからしか触れない
本当は大好きなんだ
愛おしさも、失う怖さも知っているから
反対していたんだよ…
#部屋の片隅で
「おれは今から蝙蝠だぁー」
ちゃめっ気たっぷりに兄は言いながら
少し高い鉄棒でぶらぶら
「今度こそー!見てろよっ」
何度も失敗した逆上がり
半分だけ逆さまで見上げた空は
涙で滲んだ青だった
ぐるんっと全回転した逆上がり
着地して見上げた空は
吸い込まれそうなオレンジと
兄のガッツポーズ
今でも思い出す
青春の彩り
#逆さま
眠れないほど興奮した昨夜は
何だったのだろう…?
「あー…飯でも食いに行きます?」
「え、あ、そっすよね!じゃあ行きましょう」
オンラインゲームで知り合った人と
初めてリアルで顔合わせした
お互いが"ネカマ"である事実を知り
挙動不審
そして、女子トークした日々を憂いながら
街中に流れるクリスマスソングに
耳を傾けていた
#眠れないほど
「夢は小説家!」
堂々と言えたのは何歳迄だったかな?(笑)
現実はアプリに物語を綴り
ほんのちょっとだけ
(誰かに楽しんでもらえてたたらいいな)
(誰かに喜んでもらえてたらいいな)
そう思いながら
物書きの気分だけ楽んでいる
#夢と現実
"この人と別れる"というシチュエーションは
普通に考えて
余り良い印象にはならない
「さよならは言わないでおくよ
何でって?そりゃお互い人間だもの
その時その時の感情で
馬鹿をして後悔することもあるからね」
予防線だよ、と納得のキス
時間のすれ違いで別れる私達は
涙のない最後の日を過ごした
#さよならは言わないで