「37度2分…。微熱だなぁ」
「ん?どれどれ?」
額に当てられた手に微力の負荷
グイッと上向きになった顔に
覆い被される影と、唇に重なる柔らかな感触
「あはは。熱泥棒とでも呼んでくれたまえ!」
「あはは、じゃねぇだろー
お前は男の子であって俺と同類。冗談はよせやい」
口元を指でなぞる相部屋の同類は
ニヤニヤ笑った
「あざといであろう?褒めたまえ」
寒気は
高熱の予感だ
#微熱
どんなに寒くても
太陽の下で笑っていれば元気になれる!
…そう思っていたけれど
それは小学生までの限定だった?
北風に吹かれて鼻水を啜る
フラれたあとの心痛ってさ
太陽のあったかさすらも吸収しちゃうんだな
初めて知ったよ、ちくしょー
クソさみぃな…
#太陽の下で
バッチーン!
彼氏と手を繋ごうとしたときに
激しい静電気
「あー。俺はもしや
君の体質に嫌われてるのか!?」
苦笑いした顔を見てから
セーターを着ることはなくなった
結婚して初めてのクリスマス
彼氏から旦那さんになった彼からのプレゼントは
ふわふわした白のセーターだった
「君の体質に受け入れられるための試練?
よく似合うから着て欲しい」
嬉しいよ…
言葉とキスが寒い冬を暖かくする
#セーター
彼の肩に寄り掛かりたくて
好きだなぁと思う心地良さを持続したくて
電車で寝たふりをした
ガタンゴトン…ガタンゴトン…
"寝たふり"をしていたつもりなのに
電車の揺れと肩の暖かさで
あっという間に眠りに落ちてしまった
駅に着けば
「またね」で別れる寂しさがあるのに
勿体無いくらい残念
でも
「よく寝れた?
ごめん、寝顔が可愛らしくて起こせなかった」
彼の大きな手がポンッと頭に
優しく目に飛び込んだ、その笑顔の瞬間に
今日は昨日よりも恋に落ちていく
#落ちていく
「あら〜。お似合いのご夫婦ね!」
通りすがりのご老人に声を掛けられて
2人は固まる
(え…なんで?俺、父親なんだけど)
(は!?息子なんだけど…)
ぎこちなく顔を見合わせ
「ぷーっ」
同時に限界、腹を抱えて大爆笑した
#夫婦