彼の肩に寄り掛かりたくて
好きだなぁと思う心地良さを持続したくて
電車で寝たふりをした
ガタンゴトン…ガタンゴトン…
"寝たふり"をしていたつもりなのに
電車の揺れと肩の暖かさで
あっという間に眠りに落ちてしまった
駅に着けば
「またね」で別れる寂しさがあるのに
勿体無いくらい残念
でも
「よく寝れた?
ごめん、寝顔が可愛らしくて起こせなかった」
彼の大きな手がポンッと頭に
優しく目に飛び込んだ、その笑顔の瞬間に
今日は昨日よりも恋に落ちていく
#落ちていく
「あら〜。お似合いのご夫婦ね!」
通りすがりのご老人に声を掛けられて
2人は固まる
(え…なんで?俺、父親なんだけど)
(は!?息子なんだけど…)
ぎこちなく顔を見合わせ
「ぷーっ」
同時に限界、腹を抱えて大爆笑した
#夫婦
「どうすればいいの!?」
叫んで目が醒める
夜中にガバッと布団を捲り上げて跳ね起きた今
酷い寝汗と息切れだ
悪夢でも見たに違いない
…って悪夢?
内容まったくわからないのだけど???
午前3時ジャスト
眠気はもう何処かにすっ飛んだ
#どうすればいいの?
「あなたは私の大切な宝物なのよ?大好きよ」
母はそう言って愛おしく頭を撫でてくれた
そんな過去もあるっていうのに
一体なんなんだ!?
「あんた何のんびり寝てんのよ!
今日は塾でテストだっつーの!!!(怒)」
不思議も不思議
尻を蹴られて床に転がされている
ねぇ、何なの?
俺って宝物なんじゃねぇの?違うの?
#宝物
「キャンドルサービスのお裾分けよ♡」
娘の結婚式のあと
着替える前に仏壇に手を合わせる
写真の中の夫も喜んでいるのか
揺らめく蝋燭の火が
柔和に温かく感じられた
-2nd story-
夜遅くに帰宅すると
「これは…私達の愛だか恋だかの炎よ、あなた。
消したいなら消しなさいね」
妻は真っ暗な部屋でキャンドルだけを灯し
テーブルには
離婚届とエンゲージリング
「いや待て!早まるな」
「ふぅ…」
妻は暗澹たる溜息で炎を大きく揺らす
部下(※男)の恋愛相談に
付き合っていただけだった
だが
言い訳も通らなそうなアルコール臭と
部下に吸い付かれたキス痕に
言葉も揺れていく
#キャンドル