秋風のシラッと体温を奪っていく冷たさに
負けてなるものか!と
ストールを解けないようにしっかりと巻いた
「ごめん…気持ちは嬉しいけれど、付き合えない」
秋風に吹かれ
木から枯れ葉がぽとぽと落とされた…
気持ちまで落とされてなるものか!と
涙が溢れ落ちないように唇を噛む
「わかった」
潔く、身も心も冬を迎えよう
#秋風
「また会いましょう」
合コンの、別れ際の常套句だと思ってた
当然『また』は絶対にあり得ない
今夜は何故か3歩歩いて踵を返し
2歩戻って来た男がいた
「または有り得ないと思う。
俺、合コンは付き合いだし嫌いなんだ」
なんて正直なひと
言わなくてもいいのにな〜と内心で呟く
「今から少しだけ一緒に歩かない?
ごめん、きみのこと好きみたいなんだ」
アルコールの所為じゃ…ない?
なんて正直なひと
顔を赤くして、恥ずかしそうに俯いていた
#また会いましょう
『母さん楽しみにしてて。
今さ、父さんと一緒に料理してるんだよ』
我が家の男達は
決して"料理男子"というわけでは無い
正しく言えば
"料理をしたことのない男子"だ
冷蔵庫の中身を見てレシピを決めたのだろうか?
包丁は大丈夫?
火の調整は問題ない?
スマホを耳にしながら
訊きたいことを我慢してスリルに身を震わせた
#スリル
飛べない翼を持つペンギンは
空に憧れを持つことなんて
生まれた時からないだろうなって思った
それと同じで
恋を知らない俺も
恋に憧れを持つことなんて無いと思っていた
一眼レフのカメラを構えて
ペンギンにシャッターを押し続ける
彼女の姿を見る迄は
ペンギン達の世話をしながら
今日もそっと溜息を吐く
-2nd story-
天使は自らの翼を引きちぎった
飛び散る純白の羽根に血を滲ませて
「神様になんて仕えるのやーめた。
あんたに仕えることにする」
痛みばっかり知るような人間に寄り添うには
飛べない翼くらいが丁度いい
#飛べない翼
ススキと満月を独り占めできる場所が
都会にもあったらいいのにね
「ほら見て〜!お月見団子、買ってきたよっ」
風に揺れる金色の穂みたいに
輝く笑顔が揺れて
まぁそれは
僕の独り占めなんだけれどさ
#ススキ