夕暮れ時に"さよなら"も"バイバイ"も
言いたくなかった
続きのない"終わり"を感じてしまうからだ
「またね」
終わらせないための約束を
恐々と繋ぐ毎日だった
でも
今日からはもう繋げない
「ごめん。気持ちに応えることはできない…」
うっかり言葉にしてしまった"好き"は
美しいたそがれの空に、溶けてしまった
#たそがれ
きっと明日も、お気に入りの珈琲を淹れて
「美味しい…」と独りごちるように
文章を考えてストーリーを編み
スマートフォンに物語を書き込んでいる事だろう
5月からはじめた『書く習慣』は
着実に"習慣"となっている
#きっと明日も
一人暮らしあるあるだけど
仕事から帰ってもマンションの部屋は
カーテンで閉じられ電気もオフ
真っ暗なままの部屋が音もなくあるだけだった
「ニャーン♪」
でも今日からは違う
キッチンにだけ明かりが灯り
小さな"もふもふ"が小首を傾げながら
僕に抱かれるのを
今か今かと待っていてくれた
「ただいま」
-2nd story-
突然の訪問ほど怖いものはない
「風邪ひいて大変だろう?看病させてくれよ」
高熱で朦朧とするわ足元がふらつくわで
確かに大変だった
でも、本当に大変だったのは
汚部屋を満遍なく見られたことだった
「…。」
「…。」
彼氏も固まり、私も固まった
#静寂に包まれた部屋
きみはいつもそうだ!
面倒事はすぐにわたしに投げつけてくるよね
だから
仕返ししてやってもいいかなって、思ったんだ
「いい加減に気付いてよね、バカ。
ずっと前から…わたし、きみのことが好きなんだよ」
顔を赤くしたきみに
一つだけ、言い訳をする
別れ際に告白をして逃げたのは
面倒だからじゃないんだよ
怖かったの…
-2nd story-
「あ、忘れてたー!」
別れ際に
ギクシャクとしながら演技?
ギュッと両手でわたしを抱きしめて
チュッとおでこにキスをした
不器用な彼の優しさが
とても好き
#別れ際に
通り雨は『偶然』
通り雨のあとの"虹"は『奇跡』
見上げたとき
トクンと心音が鳴るような幸せが
通り過ぎるんだよ
「うそ…雨?」
予定のない雨音がした
降り始めたばかりの通り雨?
コンクリートの地面がポツポツと濡れて行く
「うわー。下校に合わせたような雨だね」
「!?」
昇降口で靴を履き替えながら
横並び
同時に雨空を見上げたのは
大好きな先輩だった
通り雨は『偶然』、こころの虹も『奇跡』だ
ザアッと幸せが通り過ぎるものだから
待って待って!と
雨が止まないようにと願ってしまう
#通り雨