壁が薄いのわかってんのかなぁ
わかってないにしても無用心なんじゃないの?
水の流れる音と
軽快な歌声が聞こえて来るとき
隣人の可愛い子が風呂に入っているって
わかるんだよね…
イヤホンを耳にして
髭男のミックスナッツを口遊む
少しは防犯になるでしょ
#声が聞こえる
「先生ー!ドングリ見つけたよ!」
「来て来て先生ー!イチョウの葉がとーっても綺麗だよ」
子供達に軽く手を振って笑った。
「わかったわかった。行くから待てよ」
秋に恋する生徒達は
無邪気で可愛らしかった
大きくなったら本当の"秋恋"楽しめよ、だなんて
失恋したばかりで…
切なさも色づく葉と一緒にこぼれ落ちていく
#秋恋
包み込むように大切にしたい、大事にしたい
そう思う対象ばかり壊れてしまう
「ごめんね、長く生きられなくて」
近々この世を去る自分よりも
愛しい人は悲しい顔と涙で壊れそうだった
どうしたら支えられるのかと考えたとき
今まで大切にしていなかった自身の命を、気持ちを
大事にしたい…
大切にするから、と
心からそう思ったんだよ
-2nd story-
「え、怪我したの?血が出てるじゃん…」
文化祭の準備中
段ボールで切った指に、急ぎ巻かれた絆創膏
制服のポケットから出された絆創膏には
彼女の熱と匂いと優しさを感じた
血はもう止まっている
でも、外したくない
#大事にしたい
レールの上をゆっくりと焦らしながら上昇していく
ジェットコースター!
あと少しで最高到達点からの最高速度
そして最大落差が待っている
隣にいる彼女はハイテンション
俺はローテンション
(なんで乗るって言っちゃったんだよ俺…!)
苦手と得意の温度差も最大落差
ぐわん
視界が無常にも反転
意識が遠ざかりそうになりながら
神様に祈った
(ぎゃああああ!時間よ止まれ〜〜〜!!)
-2nd story-
今何時だ?
目を擦り、時計を見てギョッとする
「嘘だろ…」
絶望的な遅刻だった
スマホの充電も残り10%を切っている
枕に突っ伏した
「はぁ〜。このまま時間よ止まれ!」
街灯もなく真っ暗な田舎道に嫌気が差して
煌びやかな都会に憧れた10代
「…こんな筈じゃなかったのに」
煌びやかな都会から眺める夜空は真っ暗で
都会を蔑み、心が枯れて
見えない流れ星よりも
涙が流れた30代
#夜景