包み込むように大切にしたい、大事にしたい
そう思う対象ばかり壊れてしまう
「ごめんね、長く生きられなくて」
近々この世を去る自分よりも
愛しい人は悲しい顔と涙で壊れそうだった
どうしたら支えられるのかと考えたとき
今まで大切にしていなかった自身の命を、気持ちを
大事にしたい…
大切にするから、と
心からそう思ったんだよ
-2nd story-
「え、怪我したの?血が出てるじゃん…」
文化祭の準備中
段ボールで切った指に、急ぎ巻かれた絆創膏
制服のポケットから出された絆創膏には
彼女の熱と匂いと優しさを感じた
血はもう止まっている
でも、外したくない
#大事にしたい
レールの上をゆっくりと焦らしながら上昇していく
ジェットコースター!
あと少しで最高到達点からの最高速度
そして最大落差が待っている
隣にいる彼女はハイテンション
俺はローテンション
(なんで乗るって言っちゃったんだよ俺…!)
苦手と得意の温度差も最大落差
ぐわん
視界が無常にも反転
意識が遠ざかりそうになりながら
神様に祈った
(ぎゃああああ!時間よ止まれ〜〜〜!!)
-2nd story-
今何時だ?
目を擦り、時計を見てギョッとする
「嘘だろ…」
絶望的な遅刻だった
スマホの充電も残り10%を切っている
枕に突っ伏した
「はぁ〜。このまま時間よ止まれ!」
街灯もなく真っ暗な田舎道に嫌気が差して
煌びやかな都会に憧れた10代
「…こんな筈じゃなかったのに」
煌びやかな都会から眺める夜空は真っ暗で
都会を蔑み、心が枯れて
見えない流れ星よりも
涙が流れた30代
#夜景
カランコローン♪
ホームセンターの福引きで
四等の『花畑セット』が当たる
「花畑セット?」
反芻すると
ドッサリと差し出された、花々の種
「おめでとうございます!
是非ともお庭で育てて下さいね。癒されますよ?」
店員さんはにこやかだ
そして僕は
北向きワンルームマンションの
ベランダらしき省スペースを思い浮かべた
#花畑
「もういいかい?まーだだよ」
空が泣く
夏の終わりを、惜しんでいる雨だよ
空が鳴く
秋を拒む雷鳴は、夏の後悔に
悲鳴をあげる"SOS"
震える掌には
きみの温もりは、もう残されてはいない
忘れる事もできないのに