"ひとつのパーツが欠けている"
"身体の一部が動かない"
"感情が故障している"
ボロボロだ、欠陥品だと
ゴミ捨て場に投げ捨てたれた日の夜
「大丈夫。君はこれからヒーローになれるよ」
差し伸べられた手と不確かな希望が降り注いだ
それは
完全なる満月と呼応して
煌々と輝いていた
-2nd story-
「貴女はお留守番よ、シンデレラ!舞踏会へは行けないわ!」
継母と姉に弾き飛ばされて床に転がる
歯を食いしばって虐めに耐える顔を作ろうとしたところで
芝居は中断
皆んなに頭を撫でられた
「こんな可愛い子を虐めるのが辛い、耐えられない!」
「はぁ!?」
完全なシンデレラを演じられる日は来るのか?
代役で不完全な僕は困惑した
#不完全な僕
「へい!味噌ラーメンと炒飯セットお待ちっ」
お気に入りのラーメン屋さん
780円のお得セット到着に割り箸準備よし!
「店主、角煮ラーメン」
フワッ
隣の椅子に腰掛けた男から
強烈な香水の匂いがした
パキィィィ
力強く割れる割り箸
「店主ー!追加トッピングで"ニンニク"お願いします!」
ラーメンに罪は無い
だが、唯ならぬ殺意を抱いた
#香水
言葉はいらない、ただ…
「おい、黙れ!問題集に集中しろ」
「出来ないよぉ。だって先生、めっちゃ格好良いんだもーん」
バイト先で、頬を膨らませる問題児と対立
胃がキリキリと痛む
「終わったらアイス奢るから頑張れ」
「やーん、がんばる♡」
定期テストまであと二週間
頼むから勉強してくれ
「やあ、ご機嫌よう」
「なんで…!?」
意趣返しだよ
ストーカーしてきたの、君からでしょ?
目の前の彼女は真っ青だ
ストーカーの標的がストーカーに恋をしていただなんて
"まさかのまさか"だろうね♡
-2nd story-
出会いたくなかった…!
それどころか見たくも無いくらいに
きみを嫌悪している
「消えてくれないか!?いやダメだ、潔く死んでくれ」
震えながら持つのは撃滅スプレー缶
棚の隙間から
突然現れたカサカサ音を立てる黒い物体に
否応なく心臓を鷲掴みにされている
#突然の君の訪問
お互いに初デート
前日までは準備を、当日は気配りを、
バッチリと脳内で繰り返し
予習は完璧な筈だった
「「なんか、ごめんね」」
遊園地に到着する寸前までは快晴
到着した途端にゲリラ豪雨
雨に佇みながら…
雨男に雨女は、2人同時に頭を下げた
#雨に佇む