君の話す声はソプラノ、アルト、テノール、バス
軽やかにも重くもなる
重なり音を奏でて旋律となる事も
スマホに耳を傾けながら
「今日はねぇ」からはじまる君の音楽を
「何か良い事あった?」僕は心地良く聴いている
#君の奏でる音楽
「老若男女、お前の持ち主はどんなひと?」
夏物語のひと欠片を
砂浜に置き忘れられた
麦わら帽子だけが知っている
拾い上げて砂を祓う
昼間の灼熱を和らげた西日を
スッと透過する鍔(つば)からの光は
何処となく
優しい夏の終わりを感じた。
#麦わら帽子
(申し訳ありません。今日のお題は何度か描き直してます。納得のいく一文って難しいですね)
家出した。
持ち物はスマホだけ、心許ない衝動だ。
目的もなくバスに乗る。
けれど…
「お前らぁ!大人しくしねぇとどうなるか…わかるな?」
バスジャックとバスジャック犯。
突然のアクシデントに"行き先"が決まる。
「見せしめだ。この婆ちゃんをよく見てろ」
犯人が握るサバイバルナイフは
夜間の信号の赤をギラリと反射する。
犯人と、ポケットの中の飴をくれたお婆ちゃんは
手を伸ばせば、すぐ届く距離。
俺は
この時、悔いのない人生の終わりを決めた。
#終点
上手くいかなくたっていい…
そんなこと思いたくないし、思わない
完璧じゃなくて不完全
失敗ばかりで手探りな僕の"恋"
きみはとても上手に微笑んでくれるね
「大好きだよ」と
きみを思う気持ちは100%なのに
どうしてかな
上手くいかないことが多くて凹んでばかりだ
蝶よ花よと育てられた姉は
蝶のようにも花のようにも育たず
男気溢れる女性へと成長した
「あんたに何かあったら私が前に立つから言いな!」
ビールジョッキが似合いすぎて苦笑する
対して俺の方が、蝶だか花だかに勘違いされて
虫が寄り付いて離れない
「ありがとう、姉ちゃん。ストーカー被害の相談ができてよかった」
カシスオレンジの氷が音を立てて沈む
溶け込む様にじっとりと張り付く結露と
グラスに映る下卑た目…
唇を噛み締めながらも面前の姉に癒された。
#蝶よ花よ