家出した。
持ち物はスマホだけ、心許ない衝動だ。
目的もなくバスに乗る。
けれど…
「お前らぁ!大人しくしねぇとどうなるか…わかるな?」
バスジャックとバスジャック犯。
突然のアクシデントに"行き先"が決まる。
「見せしめだ。この婆ちゃんをよく見てろ」
犯人が握るサバイバルナイフは
夜間の信号の赤をギラリと反射する。
犯人と、ポケットの中の飴をくれたお婆ちゃんは
手を伸ばせば、すぐ届く距離。
俺は
この時、悔いのない人生の終わりを決めた。
#終点
上手くいかなくたっていい…
そんなこと思いたくないし、思わない
完璧じゃなくて不完全
失敗ばかりで手探りな僕の"恋"
きみはとても上手に微笑んでくれるね
「大好きだよ」と
きみを思う気持ちは100%なのに
どうしてかな
上手くいかないことが多くて凹んでばかりだ
蝶よ花よと育てられた姉は
蝶のようにも花のようにも育たず
男気溢れる女性へと成長した
「あんたに何かあったら私が前に立つから言いな!」
ビールジョッキが似合いすぎて苦笑する
対して俺の方が、蝶だか花だかに勘違いされて
虫が寄り付いて離れない
「ありがとう、姉ちゃん。ストーカー被害の相談ができてよかった」
カシスオレンジの氷が音を立てて沈む
溶け込む様にじっとりと張り付く結露と
グラスに映る下卑た目…
唇を噛み締めながらも面前の姉に癒された。
#蝶よ花よ
好きな作家の小説を読み進める
作中の登場人物で気に入ったひとが死ぬことは
最初から決まってた
それでも…!
堪え切れずに涙してしまうのは
彩られた起承転結と登場人物の生き様に
魅せられていたからだ
本を閉じたあとの消失感と
栞を外した手が、未だに震えて止まらない。
#最初から決まってた
白い砂浜、青い海、どでかい入道雲
夏もいよいよ本番だ。
刺すような陽射しを、手のひらで遮りながら呟く。
「太陽って女の子の服を脱がせる天才だよね」
惜しげもなく開放的。
たわわな胸を揺らしながら歩く女の子達を手招きする。
「よかったら僕達と遊ばない?」
「うわぁぁ何そのナンパ!めっちゃ寒ッ」
女の子達は一斉に胸の前をガードして逃げる。
…そうだよね、わかってた。
罰ゲームの台詞は、北風とタメを張れるくらいの寒さなんだ。
#太陽