蝶よ花よと育てられた姉は
蝶のようにも花のようにも育たず
男気溢れる女性へと成長した
「あんたに何かあったら私が前に立つから言いな!」
ビールジョッキが似合いすぎて苦笑する
対して俺の方が、蝶だか花だかに勘違いされて
虫が寄り付いて離れない
「ありがとう、姉ちゃん。ストーカー被害の相談ができてよかった」
カシスオレンジの氷が音を立てて沈む
溶け込む様にじっとりと張り付く結露と
グラスに映る下卑た目…
唇を噛み締めながらも面前の姉に癒された。
#蝶よ花よ
好きな作家の小説を読み進める
作中の登場人物で気に入ったひとが死ぬことは
最初から決まってた
それでも…!
堪え切れずに涙してしまうのは
彩られた起承転結と登場人物の生き様に
魅せられていたからだ
本を閉じたあとの消失感と
栞を外した手が、未だに震えて止まらない。
#最初から決まってた
白い砂浜、青い海、どでかい入道雲
夏もいよいよ本番だ。
刺すような陽射しを、手のひらで遮りながら呟く。
「太陽って女の子の服を脱がせる天才だよね」
惜しげもなく開放的。
たわわな胸を揺らしながら歩く女の子達を手招きする。
「よかったら僕達と遊ばない?」
「うわぁぁ何そのナンパ!めっちゃ寒ッ」
女の子達は一斉に胸の前をガードして逃げる。
…そうだよね、わかってた。
罰ゲームの台詞は、北風とタメを張れるくらいの寒さなんだ。
#太陽
海辺の教会から鐘の音が響く
今日も結婚式?
幸せの楽譜通りに鐘は鳴る
イヤホンを外して風に耳を寄せた
「幸せに向かって、よーいどん!」
拝啓、まだ見ぬ人へ。
将来へのイメトレは出来ています
#鐘の音
つまらないことでも「まぁ気にすんな」て
笑えるお前のこと気に入ってるけど
お前が本気で好きな女の子を「まぁ気にすんな」て
笑って譲ろうとするな。
「つまらないことにするつもりか?」
…本気で、怒るから。
#つまらないことでも