汗ばむ真夏のデート。
『今年最強最悪の恐怖!』…最新の技術と叡智が搭載されたお化け屋敷に、チケットを持ちながら並んでいた。
「わぁ!楽しみだね♡」
喜ぶ彼女の横で、僕の足はガクブルと震えて立っているだけでも精一杯。
"子供のままでいられたなら"
「怖かったら抱き付いて来いよ?」だなんてさ、虚勢を張らずに済んだのになー。
「お母さん、だーいすき!」
子供の頃は言えたのにね
どうして今
素直に言えなくなっちゃったのかなぁ…
カーネーションの花束をキッチンに置き、自室に向かう。
#愛を叫ぶ。
自由奔放に飛ぶ"モンシロチョウ"が、あの子のランドセルに止まる。
狡いぞ、オマエ!
ぼくがオマエより早く見つけていたんだぞ?
ポカポカあったかいあの子はね、お日様みたいなんだ。
高校に近い最寄駅へは、降りる人より乗る人が多い2駅に停車してから到着する。
満員電車でギュウギュウに押し込められるのは毎日だ。
でも、
押された拍子にブラウス越しの膨らみに手
揺れた拍子にスカートから太腿に入り込む手
背後から『痴漢』に遭ったのは初めて。
肌の感触を弄ぶ手が、太腿からショーツに差し掛かる。
恥辱と我慢の限界だった。
「こら痴漢!股間蹴り上げてあげようか?逃がさないよっ」
ガシッと痴漢の手を捻り上げた…つもりだった。
「股間…て、え?佐々木さん?」
掴んだ手とその声に固まる。
痴漢は開いたドアから逃げて行った。
「あわわわわ」
顎が外れたように言葉も出ない。
私は…
恋する先輩の手を鷲掴みにしていた。
#忘れられない、いつまでも
お前との友情は終わりだ。
突然だった。
僕の親友は関係を切り、去って行った。
"一年後"
元親友はとても美しい女性となって戻って来た。
僕の好み、ドストライク。
「もう二度と手放さないから」
あっという間に相思相愛の関係に結ばれる。
たった一年、されど一年。
身も心も関係も、移ろうには十分な時の経過だった。