日常
幸せそのものの休日
帯の紹介文にそう書いてあったその本は
実際に読んでみると
母はずっと機嫌が悪そうで
父は疲れていて
子供は泣いていた
夕方の定番アニメも似たようなものかもしれない
暇より不幸なことはないってことなのかな
好きな色
明るくてみんなを惹き付けるあの子も
すごく静かで人形みたいに綺麗なあの子も
私とは全然違う世界の人みたいに見えたけど
話をしてみると好きな色はみんな一緒で
なんとなく一緒にいる時間も増えていった
好きな色が一緒だと
求めるものや、進む方向がなんとなく同じなのかも
でも全く同じということはないから
パッと見の大きな違いは
勘違いを防ぐには丁度いい
あなたがいたから
もう一月も生身の人間に会っていないな
人は一人では生きていけないと言うけれど
私の脳みそはごまかそうとしているみたいだ
物語の登場人物を実在する人のように
思い込みはじめた
おかげで正気を保っている気がする
君も死んでしまった
会おうと思えばいつでも会えるけれど
涙がとまらない代わりに
私の頭は君との思い出でいっぱいだから
またいつかね
相合傘
私も君の傘に入りたかった
自分に自信が持てない私は
急に降ってくる雨が好きだった
真面目に過ごしてて良かったと
心から思える数少ない機会だから
みんなが置き傘の奪い合いをするのを横目に
折り畳み傘を取り出しながら
こっそり優越感に浸っていた
とっても羨ましいから、やめてみようか
そして大きな傘を買おう
いつかその日が訪れますように
落下
落下する夢をたまに見る。
その夢はいつも
小さい頃通っていたログハウスから始まる。
地下にあった真っ白な壁の迷路を進み
広いところに出て寝そべっていると
床に吸い込まれるように落下する。
夢の話ってつまらない。
小説のあとがきに
これは夢で見た話だと書かれていると
とたんに読む気をなくす。
怒りすら湧いてくるときもある。
くだらないと思っているのかな。