あなたがいたから
もう一月も生身の人間に会っていないな
人は一人では生きていけないと言うけれど
私の脳みそはごまかそうとしているみたいだ
物語の登場人物を実在する人のように
思い込みはじめた
おかげで正気を保っている気がする
君も死んでしまった
会おうと思えばいつでも会えるけれど
涙がとまらない代わりに
私の頭は君との思い出でいっぱいだから
またいつかね
相合傘
私も君の傘に入りたかった
自分に自信が持てない私は
急に降ってくる雨が好きだった
真面目に過ごしてて良かったと
心から思える数少ない機会だから
みんなが置き傘の奪い合いをするのを横目に
折り畳み傘を取り出しながら
こっそり優越感に浸っていた
とっても羨ましいから、やめてみようか
そして大きな傘を買おう
いつかその日が訪れますように
落下
落下する夢をたまに見る。
その夢はいつも
小さい頃通っていたログハウスから始まる。
地下にあった真っ白な壁の迷路を進み
広いところに出て寝そべっていると
床に吸い込まれるように落下する。
夢の話ってつまらない。
小説のあとがきに
これは夢で見た話だと書かれていると
とたんに読む気をなくす。
怒りすら湧いてくるときもある。
くだらないと思っているのかな。
未来
明日なに食べようかな
1年前
社会人になると
半年後のことなんて予定立てられないよ
そんなことを言った人がいた
はじめ聞いたときは嘘だと思った
会社は学校のように規則正しく
ビジネスに年間計画は欠かせないだろうと
思っていたからだ
でも実際そうだった
私がただの平社員だったからだろうか
いやむしろ階級が上がると
予想外の場所に皆を連れていかなくては
そんなプレッシャーを背負うことになるのではないか
仕事だけじゃなかった
死を覚悟した病も
殺したくなるほど憎かった相手も
死んだように伏せった別れも
何とか普通の生活に戻り1年も経つと
もうよく思い出せなかったりする
1年前、何食べたっけなあ