⸺では、また。二度とお会いしたくないですが。
「違う、なぁ…バツ」
⸺じゃあね♪ばいば〜い!
「これも違う、かな…バツ」
⸺ふふっ……では皆様、さようなら。
「あぁー、これ…もしっくりこないな。これもバツ」
⸺お前ら、あばよ。
「これも…ちg「台本出来たかー?」どぅわっ!?!?」
「ケケっ、ひっくり返ってらぁ。んなに驚いたのか?」
「お、驚きますって!あぁもう、びっくりした…急に声かけないでくださいよ」
「にゃはは、わるいわるい。んで、どう?台本出来た?」
「それ絶対悪いって思ってませんよね……台本作るって言ったの昨日ですよ。一日二日で出来たら苦労しませんって」
「そか…じゃ、しゃあないか。なら、さっきから何してたんだ?」
「主人公とヒロインの別れのシーンを入れたくて、主人公の性格が分かるような言葉を作ってから他の所に手をつけようと」
「ほぉ〜ん…なら邪魔せんように、下校時間になったらまた来んぞー」
「あっはい。分かりました先輩」
「せいぜい頑張れなぁ…只人くん」
「確かに僕は凡人です、が……⸺それだ!!!」
【別れ方のヒントは去り際に】
秋には様々なコトをする言葉がある。
食物読書にスポーツに……冬になる前に色々楽しむ、って意味で色々な秋ができたのかな?
まぁそんなことはそこら辺に置いといて、だ。
多分私は夢を見ている。三日程前に見たクソみたいな悪夢⸺あぁクソ、あの筋肉何なんだよ私は苦手なんだよ!!!⸺ではなく、とっても楽しい夢。好きなだけ食べても体重にならない、夢のような秋の味覚が大量にあるからだ。
すげぇ!旬の食べ物が食べても食べても無くならないし、脂肪になんないし、今まで読んだことある本がずらぁーって並んでて好きなだけ読み返せるから、めっちゃ楽しい!
あっははは〜♪たっのしいー♪
*
細々とした用事で、義姉と話そうと家を訪ねたのだが…。
「あっははは〜♪たっのしいなぁー♪」
「何?あれ」
すっごい上機嫌で家の中を彷徨い歩く義姉を横目に義兄に詳細を聞く。
「あぁ…アイツが持ってきた果物の中に、幻覚作用があるのがあってさ。俺が選別して捨てる前に食べちゃったみたいで、数十分前くらいからあぁなってる。処置は吐かせるか時間経過しか無いだとさ」
「えぇ……つまり、事細かに記録して、正気に戻ったときに教える気なんでしょ。知ってる」
「せぇーかぁい♪せっかくだし、動物の耳カチューシャでも着けさせようかな?」
「えぇ……(引」
流石、義姉の様々なことを記録して眺め続けるのが趣味の義兄。やってることが変態だ。……褒めてるよ?
⸺でもまぁ、義姉が働いてないなら仕方ない。義兄の美味しい紅茶でも飲んでようっと。
【げんかくのあき】
窓の外の景色を見る。
時折真っ暗闇になるのが難点だが、それで差し引いても余りあるほどの良い絶景が見れる。それでも暗闇は困るのだがな。
しかし最近、窓の調子が悪い。グルグルと窓自体が回ったり、二つある窓の一つが暫く暗闇状態が続いたり。一番酷い時は、いつもとは違う暗闇が数日続いたことだな。アレは酷かったな。暫く前はスピーカーの調子が悪い時期が数週間続いたし、そろそろ替える頃かもしれんな。
そんなことを考えていたからか、窓の外に居る人物と、スピーカーから聞こえる声に気づくのが遅れた。
『⸺ルビカ オル ラスヴェ ケルベ ズダック!』
声……呪文に気づいたときにはもう遅く、俺は引きずり出されてしまった。
*
「ユウ、引きずり出せたぞ!」
一際目立つ青年と、大昔の人間に似たジジイ。ジジイに引きずり出されたのかよ……可愛い女の子が良かったぜ。
「ほ、ホントに俺の中に、魔物がいるなんて……信じらんねぇ」
「なんじゃとお主。師匠の言葉を信じてなかったじゃと!?そこに直れ!鍛え直してやるわ!!!」
「えっわっ!?ちょっ、ジイちゃん、やめ、イタッ!?」
俺、取り憑くやつ間違えたか…?
【窓は視界、スピーカーは耳】
【お願い神様】
形の無いもので、直ぐに思いつくのは何だろうか。
私の場合は愛や恋、経験や記憶といったところだろうか。まぁ…経験や記憶はともかく、愛や恋は持ったことがないのだが。おい、私のことを寂しい人間なんだなという目で見るんじゃないよ!
「一人で煩くしてるけど、何してるの?」
⸺おっと。騒いでたから、義姉に心配されてしまった。んんっ、何でもないよー!
……変に語ったが要するに私は、愛が欲しい。
金みたいな、形あるモノで買った愛では無い。偶然や必然で出会う、運命的な愛が。
つまり、彼氏がほしいから…神様!私にも彼氏をお恵みください!!!
『うーん…気が向いたらね』
なんですとぉ!?!?!?
【じゃんぐるのじむ】
私は今、ものすごく後悔している。あんな奴を、上司だと思ってしまったことを。
何処かで腹抱えて大笑いしているか、上から目線で含み笑いでこの状況を記録しているかのどっちかしか思い浮かばないもん。
あぁクソ、今回は絶対後者だ。そうに違いない。だってそうじゃなきゃ、こんな妙な場所に来る筈がねぇ。
一度心を落ち着かせる為に、目の前にある建物の看板を見る。
〈ジャングルジム〜皆で育てよう野生の筋肉〜〉
だぁっクッソ何だよ野生の筋肉って、一体何なんだよ!?
てか周りめっちゃ超自然なのになんでビルが一棟だけ建ってんだよ電気とか水とか、どうしてんだよ!?!?!?
……はぁ、落ち着け脳内、落ち着け私。こういう時は、少しだけ記憶を遡って思い出そうじゃないか。
今日は確か、余所行きの私繋がりの人たちとの飲み会があって、それが終わって…そう。酔い醒ましに公園に寄り道したんだ。その公園のジャングルジムの方を見た時、内側に子供の影が見えた気がして、近寄って……中の空間に、入っ、たら……⸺ここにいた。
おーけー、現状の再確認は完了だ。
さて、どうする私。ジャングルの方、は間違いなく迷う。断じて私が方向音痴だからとかでは無い。無いからな!!!
うーん………よし。ビル、というかジムだな、うん。ジム行くかぁ!
「⸺君ィ!入会希望者かい?そうだろ?そうだろう!!」
なんか、すごい…筋肉をお持ちの、男性が出迎えてくれた。すごくイイ感じの人だと思うんだけど、暑いし息苦しいし圧迫感あるし何より……筋肉キャラって、見た目的に苦手なんだよね。筋肉がついてるならせめて、上裸で来ないで。上の服着てほしい、割と切実に。
「はっはぁ…君ィ、イイ身体してるじゃないか。ここへは仕上げか?仕上げに来たんだろう!そうだろう!」
………嫌な予感がして、自分の姿が見える鏡を探す。
あぁ、さいあくだ。すっごい綺麗な逆三角の筋肉さんの癖に、私の顔が乗ってる……やめて性転換してることより、一目見たときのインパクトがあるこっちの方に意識向いたんだけどちょっと誰か助けてほし⸺
*
「…ぃやだ……きんにく…ゃだ……うぅ」
友達の家に来たら、すごいうなされてる奴がソファに転がされてるんだけど…筋肉?
「なぁ。この寝てるの、このままでいいのか?」
「いいよ。寄り道しない約束破って公園で酔いつぶれてたから、悪夢見せてるだけだし」
「コイツがうなされてるのお前の仕業かよ…」
あー…まぁ、いいや。コイツらに過度なツッコミはこっちが疲れるし、放置だ放置。
「…れか………ぅしゅぇ……て」
…次来た時、向こうにしか無い果実でも持って来てやるか。