俺は小学4年生。昼休みはほぼドッジボールで遊んでいる。逃げるのが得意だ。
“待つ”ってなんだ。
オレは前に進むのみ。
赤信号だってこの通り、ひけるもんならひいてみろ。
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死んだばあちゃんが川の向こうで手を振っている。手は振り返してもまだそっちには行けないよ。
ばあちゃん、もう少し、イヤもうしばらく待っててくれい。
俺、今度からはちゃんと待ちます。
大好きなトマトに囲まれて
大好きな君と
大好きなトマトジュースを飲みたい!
もう 本当に それだけでいい!!
【伝えたい】
呆気ないもんだな。
俺、今年で44歳だ。
後、倍生きれるかわかんないし、
生きていても色々しんどいだろうな。
勉強だってそこそこ頑張った。
普通よりもいい大学に入った。
顔だって悪くなかった。
性格だって良かった、嫌な事も引き受けてクラス委員もやった。
だけど、いまいちパッとしなかった。
彼女がいたこともあった。
でも、結婚はしなかった。
就職氷河期ってやつで100社受けても1、2社しか内定もらえなかった。
いわいるバイト生活、俺じゃ無くてもいい、誰でもできる仕事だ。
いつクビを切られるかなんかわからない。
でも、この場所で這いつくばりながらも生きていくしかないんだ。
誰かのせいにしたいけど、何の意味も持たないから。
希望を持たずに上手に這いつくばって生きていくよ。
これが44歳の俺の現状。
政治家たちには到底わかんねーだろうな。
誰もがみんな
堂々と歩きながら
そしてちょっと誤魔化しながら
オナラをしているはずさ。
毎日、残業、残業。
「あー疲れた、やっと終わった。お腹が空いたぁー。」
「俺が手伝ってやったから早く終わったな、感謝しろよ。」
この人は私の先輩だ。意地悪な言い方をするけど、多分根はいい人なのだと思う。
私が仕事で失敗しても、フォローしてくれたり、一緒に謝罪しに回ってくれたり、まぁ出来の悪い後輩の面倒はいつも面倒くさそうにしながらもみてくれる。
「ちょっと待っとけ。」
「あの…コーヒーは飲み過ぎて吐きそうなので、米を、おにぎりをお願いします。」
「しょうがないな。太るぞ。」
「太ってもいいんです…。」
先輩にこんな事お願いしたらだめだよなって思いながらも、甘えてしまう。いい人だからだ。
別に、好きな訳じゃない、気になるわけじゃない。
いつも見えない所で頑張っている、面倒な事でも普通に引き受けて淡々とこなすこの人が、好きな訳じゃないんだけど…
「おにぎり、ありがとうございます。」
「よく食うな、お茶も飲め。」
「食べることが好きなんです。あんまりこっちを見ないでください。」
先輩はただ笑って見ていた、私の食べる様を。
それから6ヶ月が経ち、先輩は退職する事となった。
私が彼から退職の事をきいたのは3ヶ月前だった。
驚いたけど、引き留めはしなかった。頑張ってもらいたかったし、思い通りに生きて欲しいから。
先輩の挨拶が終わった。
「お世話になりました。ありがとうございました。
」
「こちらこそ、まあこれからも頑張ってね。」
部署内で準備した花束を、部長が手渡した。
大きな花束のせいで、先輩の表情がよく見えなかった。
私は泣きそうになったけど、我慢した。さみしくなるけど、前を向いて。
今度は私が後輩たちを育てていかないと。
「頑張れよ、期待してる。じゃあな。あんまり食いすぎるなよ。」
私の肩を叩いた。
よくわからないけど、涙が止まらなかった。
もう、私に夜食を買ってきてくれる人はいないんだ。