羽根で翼を誂え塔を出て
自由に魅入られた男がいた

しかし太陽は熱く蝋は溶けた
男は海へ堕ち遺体は島へと流れ着いた



彼を傲慢と呼ぶ者は誰か
その神域がいつまでも護られると思うな


彼を無謀と嗤う者は
一度でも勇を鼓してからにしろ




『飛べない翼』2023/11/1214

満月の下
揺られ
秋の音を奏でる

『ススキ』2023/11/1114

床一面の朱
右手に握る銀
光を失った一対の黒

次に何をするべきか
わかってはいるのだけど

ここで俺も終わろうか

そう思ってしまうほど
眩しく煌めいて離れない
2人だけの青


『脳裏』2023/11/1019

私、今から貴方を刺しますけれど
当然非難があるでしょうけど
貴方が痛みを知って
それで私がせいせいするので
きっとこれで良いのです

愚かな行為と言うのでしょう
でも、私達以外の口出しなんて
それこそ
“野暮”
というものではないでしょうか



この罰の重さの天秤は
どちらに傾くでしょうか
いいえ、私はどちらでもいいのです
これで私は満足するので
きっとこれで良いのです


『意味がないこと』2023/11/0922

雨音さえ聞こえない小さな粒で
風に乗って肩を濡らす

タチの悪い女みたい


『柔らかい雨』2023/11/0714