幕をおろしエンドロールが流れ始める。
今日あったちょっとしたダイジェストが小さく流れる。
うーん、でも何か物足りない。
幕をあげてまた光を浴びる。
物語の続きを始めよう。
もっといい結末を探しに行こう。
エンドロールを流していいと思えるまで光を浴びていよう。
反抗期が来た。
20半ばに差し掛かり、人や世界の輪郭が少しずつ見えてきた。
今まで深く考える必要もなく、悠々と乗っていた誰かの敷いたレールの上を走るトロッコを降りた。
ある人は自分の短所を隠すどころか、自覚すらなく人に振りかざしている。
ある人は根も葉もない夢を語り、足元を見ることなどなく遠くばかり眺めている。
ある人は大した功績を残してもいないのに賞賛を過剰に求め今を怠けている。
ある人は自分の不遇を呪い人を同じ沼に引きずり込もうとしている。
ある人は自惚れから人の粗ばかり見て自分を棚に上げ人を見下している。
ある人は協調性を盲信し逸脱した行為を過剰に批判することで愉悦に浸っている。
ある人は数字ばかり追い犠牲から目を背け目的の達成に囚われている。
汚い人間ばかりだ。
そんな人間が無数にいて自分の友達、親、仲間、知り合いとして横にも数多いる。
ここにいれば自分も同じ種類の人間に見られてしまう。
反抗しなければ。もがいて別の場所に行かなければ。
でも決して綺麗な人間になりたいわけじゃない。
どうせひとり残らず汚い人間。
だから自分の望む汚れが欲しい。
これが自分なんだと誇れるような醜い生き物でありたい。
君へ地図を贈ります。
まず、君が進もうとする道は素晴らしいものです。
こんなに素敵な道はないと私は思っています。
その道を私はもうだいぶ歩いてきました。
転んだことは数知れず、しんどい道のりがいくつもありました。
私はこの道がこの先どこまで続いてるか知りません。
ずっと先を目にしたら私が今この道に抱いている印象とは全く異なるものになるかもしれません。
ですが今私がいるこの地点までの道についてはよく知っています。君がこの道に踏み出すというなら初期装備の1つとしてこれを贈ります。
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何か創ることは
「想像を出来る限りそのまま現実に発現させること」
だと私は思います。
そこで重要なのは出来る限りそのまま発現させる力ではなく想像する力です。
想像するには様々なものを見なければなりません。
それは作品における、
演出技法、光、構図やシルエット、動作、一連の流れ、雰囲気、時間、企画…
分野をまたいでいるのでだいぶ抽象的ですが、具体例は思いつきやすいかもしれませんね。
ですが、これは表層にあるものです。
見るべきものはその奥にあります。
演出意図、作品の伝えたいこと、キャラクターの感情、演者…
これらは少し深いとこにありますがもっと深く見る必要があります。
制作者の感情、思想、届けたい相手、時代
ここまで深く見えれば世界の見え方が変わってくると思います。
実際に生きる人間も嘘をつき、演技をして会話や行動をします。
作品を見ることとさほど差はありません。
フィクションは嘘であっても非現実ではないのです。
大半の人間は表層で止まり、何も見えてない人が殆どです。
お客である間はそれでも特に問題はないかもしれませんね。
ですが、何かを創る人間はそれでは駄目です。
深部を見て、自分と現実を照らし合わせ、思索する。
これができてようやく想像が始まります。
私は深部が見えるまで時間がかかった人間でした。
深部が見えていない時期の想像は稚拙で、ただの猿真似でしかありませんでした。
深部が見えた想像ができた時ようやくどう世界に発現させるかが考えられるようになります。
技術というのはその時に出来る限り想像通りのものを発現させるためのものです。
もちろん表層に置きましたが、技術も見る力が必要です。
これに関しては思索ではなく、出力がまず先に必要です。
出力してようやく解像度が上がります。
見て、考えて、出して、また見る。
これが創るという行為です。
最高に贅沢で楽しい行為ですよ。
これは補足ですが、想像する力は、創る人間に必須ですが、創る人間に関わる人間にも必要です。
創る人間の創りたいものを手伝う事、修正する事、売る事をするのにもその想像する力がなければ足を引っ張ることになってしまいます。
ここまでが私が今君に伝えられることです。
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君についてここ一週間考え続けていました。
それは私の君への態度について自分を見つめ直すということでもありました。
”創るとは何か”を君を見て改めて考えさせられました。
これを書いた理由としては、いち早く私の隣に君が来て一緒に歩きたいという思いが中心にあるのだと思います。
綺麗事のようですが、私の独りよがりな願望ということでもあります。
これは君へ贈る地図です。
私のいる地点から最初に進むならどうするべきかを示しましたが、どう歩くかは君が決めることです。
健闘を祈っています。
私は色水。
紙の上にゆらゆらと浮かび染み込まないように浮かぶ色水。
そこに違う色の色水が近づいてきて私と触れる。
張っていた力が緩んで少し混ざる。
また新しい色水が近づいてきて、また少し混ざる。
そうやって大きな色水が紙に浮かんだ。
どう?私綺麗?
いろんな色に囲まれて前より鮮やかになったんじゃないかな。
いいでしょ?
うん。確かに綺麗。濁った色になってるとこも少しあるけど遠くから見ればとっても鮮やか。
でも私は少し薄くなった気がする。
前はもっと濃い色だったんじゃないだろうか。
今の私はどこまでが私かはっきりと分からない。
きっともっと私は綺麗だった。
私は私の色だと思われるとこまでで色水を切り離した。
少しだけ別の色が混じっている。
以前よりも小さくて少しくすんだ色水になってしまった。
でもそれでいい。今から私の色で染めるのだから。
濃く、強く、激しく染まれ。
私は私だけに染まってゆけ。