私は“好き”をやめない。
隣の君も後ろにいたあいつもみんな“好き”を放り投げていった。
嫌いな物を受け入れ、自分の時間を売り、休息だけが生きがい。
何かができない事をしょうがない事にして諦めてる。
それどころか、諦めてる自分を褒めてもらおうとしてくる。
彼らは衰え、不自由になっていく自分を前進しているかのように棚に上げる。
でも私はそうはならない。
ひたすらに“好き”をする。
そこに全力を注ぎ込む。
“好き”の極地に向かって走る。
速度を上げろ。
光を追い越せ。
時間を止めろ。
輝き続けろ私。
私は“好き”をやめたりなんてしない。
やりたい事なんてある?
いろんな大人が建てた道しるべを必死にたどった。
みんなに遅れないように足が悲鳴をあげようと進み続けた。
いろんな人をみた。
道しるべ通りに凄まじいスピードで駆け抜けて行く人。
後ろから来て私をどんどん追い越して行く人。
道しるべから大きく外れることで逆にみんなから褒められる人。
そんな人を見ていたら私はいつの間にか遠く外れた道に来てしまった。
遠く遠くに見える道しるべが置かれたきれいな道。
あそこに戻ればいいのかな。でも今からあそこに戻ったらみんなはどれ程先に行ってしまうんだろう。
「やりたい事とかないの?」
急にそんなこと言われたって困ってしまう。
こんなところに来ちゃった私にやりたい事なんて言う権利あるの?私のわがままを誰か聞いてくれるの?
ううん。わかってる。
これ以上道を外すなんてとても恐ろしくてできなかった。みんなが行かない道に行ってどこかに辿り着ける自信なんて微塵もない。
でも道しるべの置かれた道に戻ってみんなとの差が明らかになるのも嫌。
そんな情けない私がいるだけ。
だれか私を拾い上げてどこかに連れてってくれないかな。
臆病で卑怯な私を独りで生かさないで。
ねぇ、君。自分の事、見てるかい?
うん、君だよ。君は君自身のこと、ちゃんと見てる?
自分のことは自分が一番分かってる?
それは君自身の言葉かい?
君は何か決断するとき、なにを基準に考えてる?
なんでもいい、授業中にトイレが行きたくなった時とかでもいい。
君はどうする?
それはなにを基準に決断したんだろう。
誰かからの評価?評判?
それって誰?
先生?それとも友達?それとも別に仲が良いわけでもない同級生?
それともそんなの何も気にしてない?
それって誰かからそんなの気にする必要ないって言われたからじゃない?
それは誰だっただろう。
親?それともそれ以外の大人?それともアニメとかのキャラクター?
誰かが思い浮かんだ?
きっと君が何かを決めるときってのはきっと誰かから渡されたコンパスで決めてる。
でも色んな事を思い出して。好きなもの、嫌いなもの、夢中になったもの、理由はないけどやりたくなかったこと。
そしたら誰かが思い浮かばない事がある。
君自身はそこにいるよ。そこにいる君を大切にしてあげて。
悪いことなら背中はちょっと押せないけどね。
きっとあるよ。君が忘れてた素敵な君自身。
私は“つくる”のが好き
そんな事考えもせず時間も忘れてつくった。
そしたらキミがやって来て、
私の“つくった”を「好き」と言ってくれた。
もっとキミの「好き」が欲しくて一生懸命つくった。
キミはまた沢山の「好き」をくれた。
そしたら私の“好き”が分かってきた。
そして“嫌い”も分かってきた。
私は人の“つくった”を沢山見るようになった。
沢山の“好き”ができて、沢山の“嫌い”もできた。
私は初めて“嫌い”を口にした。
そしたらアナタがやって来て、
「僕もそれが嫌い」と言った。
アナタと嫌いを共有したらお互いを分かり合えて嬉しかった。
そしたらだんだん私の“つくった”が醜く見えてきた。
「嫌い」
私は“つくる”をやめてしばらく経つ。
そんなある時キミがやって来た。
私の“つくった”が気になると言う。
キミは私が断っても引かなかった。
私はヤケクソに“つくる”をした。
“きらい”が出来上がった。
私は情けなくて恥ずかしくて惨めだった。
目の前に広がる“きらい”の責任を押し付けるように私はキミを睨んだ。
キミは私の“嫌い”に目を向け口を開いた。
「やっぱり、好き」
…
私は私の“つくった”が嫌い。
でも、私は“つくる”が好き。
私はキミの側で“好き”に向かって走っている。
「誰かいますかー」
どこまで続いているのかわからない暗闇に向かって僕は声を投げた。
ぼおおぉぉん。暗闇の中で反響した僕の声が響く。
ああ、本当に僕ひとりなのか…。
暗闇が孤独と不安を僕に押し付けてくる。
それに反発するように僕は足を前に進めていく。
暗闇はますます濃くなっていく。そろそろ自分すら見えなくなってしまいそうだ。
それでも歩みを止めない。立ち止まればもっと辛くなるのは目に見えていた。
そんな時…
ぼおおぉぉん。
音が響く。なんの音だったものだろう。
孤独をまた押し付けられたとき心が保てるように、どーせ、と僕は希望を押し殺す。
風が響いてるだけだろう。
僕のさっきの声がどこかから跳ね返って帰ってきただけだろう。
どこか岩が崩れでもしたのだろう。
そんな考えとは裏腹に歩みは速くなっていく。
希望を押し殺す理由が思いつかなくなる頃にはもう我慢できなくなっていた。
「おーい!!だれか!!」
出し方など忘れていた大声が喉からはい出てくる。
ぼおおぉぉおおん。
いままでより大きな音が響く。
その先にあるのは…