窓越しに見えるのは絹ごし豆腐。鉄格子、はめ殺し。
「あ!熊五郎さん、服の裾ほつれて糸が出てますよ」「えっ、あ、ほんとだ。後ろだから気づかなかった」熊五郎は恥ずかしそうに頭を掻く。ぽりぽり。「取ってあげます!」「ありがとう」ぴーーーーーーー。「あれ?これ無限にのびますね!おもしろい!!」ぴーーーーーーー。「服が赤いから赤い糸みたいですね!」いたずらに小指に結んで見せる。「からかってないでそろそろ千切ってくれない?」唐突にこういうこと言うんだよなー。なんて思っていたらあっという間に彼女は遥か遠くまで走っていた。夕日で赤い顔を誤魔化した意味はなかったようだ。0.7の視力で見える限り、おそらく『いーとーまきまき♪いーとーまきまき♪』の要領で巻き取っているようだ。楽しそうなのはいいが服の裾がすでにみぞおちのあたりまで短くなっている。プーさんだ。クロップド丈だと言い訳するにはプーさん丈すぎる。そしてなによりこんな事になるなら少し鍛えておくべきだった。その場でジムに入会した。ちょうどキャンペーンで入会金が無料だった。さり気なくお腹を隠しながら糸を手繰り寄せつつ、彼女の方へ歩いていった。現時点で裾は脇のあたりだ。胸も隠す。…これはこれでありなのかもしれない。そんなわけはなく、やっと追いついた。彼女は機織りをしていた。きっと申し訳なく思ったのだろう。トントンカラリ。トントンカラリ。東の空が明るくなってきた。トントンカラリ。朝だ。トンカラリ。草花が朝露に濡れてきれいだなぁなんておセンチになっていると「できた!!!」そう叫んだ彼女の手には赤い布。そしてそれを俺の左脇下から通し右肩の上で結ぶ。現代の感覚だと服とは言いづらいが、さっきまでの状態と比べれば立派な服だ。「よかったーサイズぴったり」ふぅ。と安堵の表情を浮かべる彼女。「君のおかげで服は糸からできていること、糸は布になることを知れたよ。ありがとう」彼女は眠たい目を擦りながら笑う。よし、ジムへ行こう。
入道雲をニュウドウグモと書くと蜘蛛感がでる。
なんだかんだ夏は小学生のときが一番楽しかったな。友だちに電話して、待ち合わせして、自転車こいで、プール行って、アイス食べて。……書いている内に羨ましくなってきたな。こっちだってスイカ一玉買っちゃうからな。
…ここではないどこかにあるはず。…きっとあるはず。なくちゃいけない。失くしちゃいけない!見つけなくちゃ!!必ず!!!!!______Apple Pencil!!!れ!!れ!