川柳えむ

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11/19/2025, 3:35:26 AM

 スカイランタンのイベントが行われていた。気球みたいなランタンを空に飛ばすあれだ。
 そのイベントの概要に、不思議なことが書かれていた。
『短冊に忘れたいことを書いて、空に飛ばしてしまいましょう』
 こういうのって、願い事を書くんじゃなく?
 まぁ忘れてしまいたいこともあったし、面白そうだし、何より空を舞うたくさんのランタンは綺麗だろうと、参加することに決めた。
 願い事を書いた短冊をランタンに貼り付け、放つ為の会場へ移動する。
 みんな恥ずかしかったことでも書いているのか、短冊が見えないよう隠している人が多かった。
 日が暮れて、ライトを灯したランタンが一斉に放たれた。カラフルなLEDの灯りに、ヘリウムガスで飛ばされているので、空は様々な色で覆い尽くされた。
 なんて綺麗だろう……。
 その光景を見ているうちに、短冊に書いたことだけでなく、ランタンを飛ばしたことも、自分がなぜここにいるのかすらも忘れてしまったのだ。


『記憶のランタン』

11/17/2025, 10:30:31 PM

 すっかり肌寒くなってきて、もうすぐ君の出番ですね。
 頼りない僕を、いつも助けてくれてありがとう。
 僕は、今年どうだったかな? 少しくらいはちゃんと役目を果たすことができたかな?
 ここからは君が頑張ってね。僕が言うことじゃないかもしれないけど。
 僕は君の季節も楽しみにしてるよ。
 また来年会いましょう。

                    秋より


『冬へ』

11/16/2025, 9:04:54 PM

 月が君を照らしていた。
 雲の隙間から顔を覗かせた月が、まるで君だけのスポットライトのように、ぽっかりと。
 そんなことがあるのだろうか? 君は月の精のように見えた。
 儚く笑う君は、今にも月に帰っていきそうで。
 思わずそっと優しく抱き締めた。


『君を照らす月』

11/16/2025, 6:46:49 AM

 誰も来ないような薄暗い森の中、一人突っ立っていた。
 風が吹いて、木を揺らしていく。
 木々の間から木漏れ日が照らし、一瞬視界を白く眩ませる。何も見えない。
 ただ、ざわざわと騒ぐ木々の声が、耳を掠めていく。
 感じるのはその音と、木漏れ日の暖かさだけだった。
 それが体を包み込んでくるから、まるで慰めのようにも感じて、悔しくて。
 木漏れ日の下で、しばらく泣いた。
 気付けば、いつしか光は去ってしまっていたが、暖かさが跡をつけたように、心を照らしていた。


『木漏れ日の跡』

11/14/2025, 10:33:03 PM

「大きくなったらパパと結婚するー!」
「パパとは結婚できないんだぞ。パパにはママがいるからね」
「やだー! 結婚するの。約束して、パパ!」
 そんな娘の頭を撫でて宥めていたのはどれくらい昔のことか。
 大きくなった娘は、俺とじゃなく、娘自身が見つけた素敵な男と結婚する。心底嬉しそうな笑顔で、涙を浮かべている。
 俺の目頭にも熱いものが込み上げてくる。
 ささやかな約束は、果たされない。誰よりも幸せになれ。


『ささやかな約束』

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