川柳えむ

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9/12/2025, 10:05:42 PM

 台風が過ぎ去った。
『台風一過となった今日は、各地で晴れ間が広がり、青空が戻ってきています』
 ニュースから流れる言葉の通り、見上げれば青空が広がっている。

 私はこの言葉を聞くたび、小さい頃はこう思っていたな……と思い出す。『台風一家』って、なんか家族みたいなたくさんの台風が来てるのかな、とか。でもその割には晴れてるよね、とか。
 他にも『波浪警報』を『ハロー警報』。気象関係ではないけど、『汚職事件』を『お食事券』とか。
 他にも『加齢臭』を『カレー臭』、『東名高速』を『透明光速』、『土用の丑の日』を『土曜の牛の日』……とかね。
 あるよね。脳内の変換が間違っていて、どういうこと? ってなってたもの、たくさん。
 大きくなるにつれ、あーそういうことだったのねーって知ること、たくさん。
 ……え? 『怪盗乱魔』って、本当は『快刀乱麻』なの? そういう、なんか、悪魔とかみたいな怪盗の漫画じゃないの? 複雑な事件を見事に解決することの四字熟語? それこそ、そういう漫画ありそうじゃん。もうそれでいいじゃん。……知らなかったー。
(実際にそういうタイトルの本はあるみたいです)


『台風が過ぎ去って』

9/11/2025, 10:58:48 PM

 何度目の報告になるだろうか。
 もう私は一人きりになってしまった。
 無理なお願いだとはわかっているが、どうか、私を助けに来てはくれないか。

 あぁ。お願いの前に、今回は私の過去を含めた話をしよう。

 私はみんなも御存知の通り、火星の調査を目的に、民間人から集められた者の一人だ。
 実のところ、私は、確かに宇宙への興味もあったが、本当になりたいものは別にあった。

 それはSF作家だ。

 しかし私にはてんで才能がなかったものだから、夢を諦めることにした。
 そしてなんの気なしに火星の調査に応募してみたところ、まぁ予想外にも、調査員として合格してしまったわけだ。
 地球自体には特段執着や拘りもなかった。
 たとえそれが片道切符だとしても構わなかった。
 こうして私は何人かの仲間と共に、火星へと飛び立った。

 火星での生活は過酷を極めた。
 全て自分達でやらなければならない。
 それは一般的なものではない。
 食糧を作ることももちろん大変だったが、この惑星に適応する体を作ることや、謎の病原菌への対処。そしてまさかいるとは思ってもみなかった、見たこともない生物との戦いなんかもあった。

 私は起きた出来事を報告と称して面白可笑しく綴り、それを地球へと送り続けた。
 そしてその報告書は人気を博し、とうとう書籍化されることとなった。
 私の夢が思っていたものとは違うところで形となってしまった。
 そのこと自体は素直に嬉しかった。

 しかし。
 本になったところで、私はそれを手にすることはできない。
 本屋に並ぶところを見ることすら叶わない。

 今、私は後悔している。
 なぜ片道切符を容易く受け入れてしまったのか。
 地球に帰りたい。
 帰って、私の本が並んでいるところを見て、私の本を手に取りたい。

 だから。
 誰か、私を助けに来てはくれないだろうか。
 私は私の本をこの目で確認することができれば、後はどうなってしまったっていい。

 たとえ、私がこの本を面白可笑しくしようと、仲間達をこの手で殺してしまった罪によって投獄されようとも構わない。 

 どうか、私を地球に帰してくれ。


『ひとりきり』

9/10/2025, 10:40:01 PM

「サンゲンレッド!」
「サンゲングリーン!」
「サンゲンブルー!」
「「「原色戦隊サンゲンジャー、参上!」」」
 サンゲンジャーは正義の味方。今日も悪い怪人共をギタギタに叩きのめす。

「……なぁ、なんで三人なんだ?」
 戦いが終わって休んでいるところを、グリーンが二人に訊いた。
 ブルーは溜息を吐いた。
「三原色がテーマだからだろうな。単なる原色がテーマならもっと人数がいたはずだ」
「シアン、マゼンタ、イエローを入れるのは?」
「光の戦士みたいな扱いにしたいんじゃないか?」
 二人で話し合っている。
 レッドはそれを横から止めた。
「グダクダ言ってもしょうがない。俺達三人で頑張るぞ!」
 しかし、二人の目は据わったまま。じろっとレッドを睨み付けた。
「戦隊モノって、大体五人じゃん! 少ないよ!」
「何ならもっとたくさんいるパターンもあるしな」
「全然足りない! 主に女の子が!」
「なんでムサイ男ばかりなんだ!」
「戦力の話は!?」
「女の子を入れろ!」
「そうだ! シアンちゃんとか、マゼンタちゃんとか、イエローちゃんとか!」
「全員女の子想定!?」
 二人の文句は止まらない。
「別に今は何色が女だっていいんだ!」
「そうだ! レッド、おまえ、女の子と変われ」
「変われ!? 何を無茶なことを……」
「交代が無理なら、改造がある。怪人共だって元は人間で改造されたって話もあるしな」
「え、ちょ、待て待て待て待て!!!!!!!!」
 二人の目に狂気の色が浮かんでいる。正気じゃない。
「アッ――!」
 レッドは敵の陣地に連れて行かれ、そして――。

 ――怖いのは怪人でも何でもない。人間なんだと、レッドは悟った。


『Red, Green, Blue』

9/10/2025, 7:42:03 AM

 今日も私はかわいい。
 かわいいからSNSに写真をアップする。
 みんなから賛辞のコメントが届く。
 だって、かわいいから。そう、私はかわいいの。

 ふと振り返ると、知らない人が割れた鏡に映っていた。
 気持ち悪くて、更に粉々に叩き割る。

 再びスマホを見る。
 私の美貌に嫉妬したアンチが、コメントに沸いていた。

『ゴリゴリにフィルターかけてんじゃん。絶対ブスwwww』

 すぐに通報を押す。
 ふざけんな。ブスはてめーだろうが。
 私はかわいいんだ。これが私の真実た。スマホの中にある、ここが私の現実だ。


『フィルター』

9/8/2025, 10:58:42 PM

「お前は追放だ」
 朝、目覚めると、勇者がいる隣の部屋に突然呼び出され、そんなことを言われた。一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
 今まで一緒にパーティーを組んでいた。しかし、追放――つまり、もう仲間ではない。俺は用済みだということだ。
「なんで! 俺だって役に立っていただろう!?」
「自分の胸に聞いてみろ。お前とはもうここまでだ」
 勇者や仲間達は、俺を尻目に部屋を出ていってしまった。
 なぜだ。なぜ。
 俺はそんなに無力だったか?
 たしかに、俺は攻撃でも回復でもなく、補助をするだけの人間だった。
 それでも、パーティーにはそういった人間も必要だろう?
 必要なアイテムを揃えたり、ダンジョンをマッピングしたり、モンスターの弱点を調べたり。それだって立派な役目だろう。
 仲間達にはそれが伝わっていなかったのだろうか。
 俺はがっくりと項垂れた。

「ようやく追放か。決断まで長かったな」
 仲間の戦士が言う。
「仕事をミスするのはまだ許せたけどねー……いや、全然許しちゃ駄目なんだけど」
 武闘家も頷きながらそんなことを言う。
「俺の決断が遅かったばかりにみんなには世話をかけた。すまない」
 頭を下げると、仲間達が優しく肩を叩いてきた。
「勇者は悪くないわ! あいつが悪いんだから」
「そうです。謝らないでください」
 魔法使いや僧侶も俺を慰めてくれる。しかし、それが余計に情けなくなる。
 正直、あいつの仕事に対する態度は良くなかった。パーティーのお金をちょろまかし、自分の為だけに必要のないアイテムをたくさん購入していたこともあった。マッピングは間違えるし、弱点の属性をまるっきり間違えることもあった。それによってピンチに陥ったことも。
 それでも、それはまだかわいい方だった。
 困っている依頼人への大きな態度や、大金をふっかけたりするのは許容できなかった。
 特に、依頼人への暴言は酷かった。
「あんたのお子さん、かわいそうにね。でも、自業自得じゃないですか? 弱いくせに、モンスターが出るようなところに一人で行くなんて」
 一瞬耳を疑った。傷付いている人に、追い打ちをかけるようなことを言うなんて。
「まぁ俺達なら大丈夫です。倒せます。でも、俺達はその敵討ちの為に、そんな危ない場所に行くんです。これだけじゃ足りないんじゃないですか?」
 その場で殴って追放してやろうかと思った。
 それでも、パーティーの中にはこいつを必要としている人間もいるのかもしれない。
 だから、その日の夜、宿でみんなで話し合って決めた。追放することを。
「少しでも技術も、人間性も、成長してくれればと、長い目で見てきたが――甘かったようだ。俺もまだまだだ。成長できるように頑張るから、これからも、俺を助けてくれるか?」
 仲間達は顔を見合わせると、力強く頷いてくれた。


『仲間になれなくて』

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