膝の上に猫達が乗ってきた。好きな人に抱き締められた。イベントでみんなと最高に盛り上がった。
今までも時が止まってほしいと思った瞬間は何度かあった。それでも、こんなに心の深くから、時よ止まれ。そう思ったことはない。
終わらないでほしい。時が止まってほしい。
大好きな人のライブ。言葉では言い表せられないほど素敵な音楽。きっと今夜世界で一番温かい空間。あまりにも幸せ過ぎる時間。
明日も頑張ろうって思わせてくれる。生きる力を与えてくれる。
この時間の為に生きているといっても過言ではない。私が進む為の方向を指し示してくれる。心の羅針盤。
『心の羅針盤』
「またね」
『また』なんて存在しないこと、僕らはわかっていた。
けれど、願いを込めて告げる。
「うん。またね」
死ぬまでにもう一度だけでも――いや、来世だとしてもいい。いつかまた、出会えることを信じて。
『またね』
泡になりたい。
あなたの瞳に私の姿が映らないのなら。あなたの気持ちが誰かにいってしまうのなら。この気持ちが悲しみしか運ばないのなら。
泡になってしまいたい。あの、人魚姫のように。
こんな苦しみをずっと背負うくらいなら、泡になって消えてしまいたいの。
きっとあの子もそうだった。
『泡になりたい』
ただいま、夏。
夏に向かっての声掛け。自身がこの季節にまた帰ってきたことへの「ただいま。夏」なのか。
それとも、まさに今夏ですよ。という意味の「ただ今、夏」なのか。
まぁ普通に考えたら後者ですか。そうですか。
そうですね。ただ今、夏ですね。夏真っ盛り。暑くてしょうもないことをぼんやり考えてしまったりもします。
毎年やって来るこの季節。昔は夏が好きでしたよ。暑いと言っても、こんな灼けるような暑さじゃなくて。蝉の声が林の方から響いてきて、風鈴の音が涼しくて、冷えたスイカが美味しくて、夜空を彩る花火が美しくて。もっと風情が溢れるような。そんな夏。
また、あの頃の夏が「ただいま」ってやって来ないかなと、そんなことを願っています。
『ただいま、夏。』
あまりの暑さに、近くの自販機に飲み物を買いに行く。
炭酸を買い、公園のベンチに戻ると、隣に座る君に「飲む?」と尋ねた。
君は静かに首を横に振り、僕のことをじっと見ていた。
僕は見られっぱなしで、少し居心地悪く感じながらも、炭酸を飲んだ。
特に予定もない僕等は、なんとなく公園に来ていた。
こんな暑い中、二人ともよくその判断に至ったよな。と思う。
でも、空は青いし、目の前にある小さな噴水は涼しい音を立てながら水を噴き出しているし、蝉の鳴き声は響くし、隣りにいる君は薄手のワンピースを着て座っているし。なんだか、これでもかってくらい夏を感じた。
ぼーっとそんな辺りの様子を窺っているうちに、時間が過ぎて、まだ飲み切ってない炭酸は気が抜けてしまった。すっかりぬるくなっている。
彼女が手を伸ばしてきた。そっと炭酸に触れる。
「……飲む?」
再度伺うと、彼女はそっと頷いた。
「そうだね。暑いし、飲んだ方が良い」と、君に渡した。
ぬるい炭酸を飲むと、彼女は言った。
「……ぬるいね」
それから、二人して顔を見合わせて笑った。
『ぬるい炭酸と無口な君』