「ずっと隣にいて」
この言葉でプロポーズが成功し、現在嫁をもらっている。僕は未だにこのワードをチョイスしたことを誇りに思う。
彼女はネグレクトの家庭で育ったという。生まれてから愛を一度たりとも感じたことなど無かった。だから人との距離を測れずに家に限らず学校でさえ独りぼっちだった。その1人の時間を埋めるように放課後に読書をして過ごしていたらしい。
僕が中学校3年生の夏、僕は本に興味を持った。たまたま書店で手に取った本がとても面白くて何度も何度も読み返した。他の本を読みたいと思ったが僕は本のことなど一切わからない。オススメの本を聞くだけなのに僕には誰も話しかけられる人がいなかった。
ある日、図書室が開きっぱなしになっていることに気づいた。
「あれ? なんで閉まってないのかな?」
そして見つけた。オススメの本を知りたかった僕は初対面にも関わらず話しかけた。
「オススメの本ってある? 僕、本を読みたいんだけど何読めばいいかわからなくて…。」
これが彼女との出会いだった。
最初はただ1人が可哀想だから一緒にいただけだった。なのにいつのまにか一緒にいるのが楽しくて仕方なかった。僕は次第に彼女の孤独を埋めるようにずっと隣にいた。
彼女の過去を知ったからこそ僕が一緒にいたいとより強く想うようになった。だからこの言葉を僕は選んだ。
「ずっと隣にいて」
もしも去年にタイムリープできたならば奇跡の今を再現出来ないだろう。それほどまでに今の自分があるのは奇跡だと思う。
・まさか彼女ができるなんて……。
・親友とは縁を切ったなんて。
・そしてゲーム友達ができたなんて。
想像もできない世界に変わっていた。盛者必衰の理をあらわす。言葉通り心栄えた時間と仲間でさえもいつか終わりを迎える。しかし思った。
ーーー〜逆もあるのでは?〜ーーー
それでも傷が言えた訳では無い。古傷は抱えて生きていこう。未来のために僕は歩き出した。
「しゅうとだよ。これからも頑張るね!」
亡き恋人の唯一の形見だ。破れたりしてもまた縫い直して使い続けている。そもそもそんなに破けない。そんな鮮やかなピンク色の手袋を毎年使っている。
手袋を履くと彼女との日々を思い出す。お互いお金が無かったのにお揃いの物が欲しかった。すると彼女がある提案をした。
「手袋を1つ買ってお互いに片方ずつ持つとか?」
正直狂った提案だと思ってしまった。それだと片方が冷たいだけでは無いのか? しかし、よく考えてみると空いた手は繋げばいい。そう思って2人で買った。
真冬の寒い日のデートに2人で手を繋いで帰ったあの時。生涯忘れることは無い一時の1つだ。
社会人となった僕は今も形見の手袋を使っている。帰社する時にはいつも手にピンク色を身に付けている。ピンクは目立つから好きだ。いじめられた学生時代、僕を救ってくれたのは彼女とピンク色の□□□□だった。
「今日も寒いなぁ〜」
虚しい独り言が雪に溶けて消える。きっと溶けるのは彼女が聞いているからなのだろう。
「今日も仕事お疲れ様!自分!」
<私が人生で1度は書いてみたかったあとがき>
皆さんは□□□□にどんな言葉が入りますか? 僕はピンク色のTシャツを着てからいじめを気にしなくなりました。明るくなれたのはピンクTシャツのおかげなので今では週3で着用しています。僕はまだ中学生ですか皆さんもお仕事や勉学を頑張ってください!応援してます!
変わらないものはない、絶対だ。
この一文でさえ矛盾しているのはおかしいだろうか?絶対とは何においても必ずという意味である。不変の必ず。クラスメイトたちは納得し確かに、と呟く者もいた。矛盾を子供に押し付けて困惑させる。数学のように複雑にしているだけではないか。
僕は学校が嫌いだ。それはいじめでも勉強嫌いでもない。ただただ人と関わると裏切られるからだ。修学旅行で友達を失った。自分は好きでも相手からは裏切られる。相手は友達が沢山だから切り捨てることに問題は無い。嫌な世界だ。
「しゅうとー。起きなさい。学校行くんでしょ?」
今日も今日とて生ぬるい地獄がやってくる。中途半端な温度が最も気持ち悪い。そして何かが吹っ切れたのを皮切りに学校は向かう…。その足取りは重かった。囚人がつけてそうな足枷をつけているかと思った。
足枷は重力に縛りているんだ。だから自由落下はなんの苦でもない。今まで抱えてきた友だった者に対する憎しみ、彼女への愛情。全ての重みから開放されるんだ。
ーーー〜ー
「しゅうと……。なんで飛び降りなんて……。」
彼女の思いだけは変わらなかったみたいだった。この行動はもう取り返せない。変わらない事実だった。