ずっと待ってた。君が会いに来るの。
長い間ずーっと。
でも知らなかったな。もう君がここにいないの。
君がいないと僕がここにいる理由ないじゃん。
だからね、君が会いに来るの待つんじゃなくて
僕が行こうって思ったの。
きっと君はあっちで待ってるから。
今まで待たせてごめんね。
もうそっちに行くから、だからあと少しだけ。
待ってて。
『待ってて』
この場所で君と出会ったこと。
この場所で君と笑ったこと。
この場所で君と約束したこと。
この場所で君と朝日を見たこと。
もう君はいないけど、僕はずっと覚えてるよ。
大好きな君とたくさん話した場所。
君との思い出がこの場所に溢れてる。
『この場所で』
「まーま!たんじょーびおめぇと!!」
まだ発音が上手でない息子が誕生日を祝ってくれた。
夫でさえも祝ってくれなかった誕生日。
誰にも祝われぬまま今日が終わるんだと思ってたから。
息子が頑張って祝ってくれたのが嬉しかった。
息子がおめでとの合図とともに差し出したのは
折り紙で作られたたくさんのお花。
お花全てがひとつの折り紙に包まれている。
小さな花束だ。
「___。お祝いありがと、ままとても嬉しいよ!」
初めて息子が祝ってくれた私の誕生日。
今日は誕生日ともうひとつ記念日が増えてしまった。
とっても嬉しい記念日が。
「今日一緒帰る?」
いっつも俯いて笑わない君が
唯一笑って返事をしてくれる一言。
「うん!!」
普段の姿からは想像もつかない
元気すぎる返事をきいて
ちょっとにやけちゃった。
「なに笑ってんの!」
ってちょっと怒られちゃった。
でもとっても幸せそうな顔してて
余計に笑っちゃったじゃん。
どっか遠くへ逃げちゃいたいな。
クラスカースト上位の私が絶対に言えないこと。
「___ちゃんならできるよね!」
「___ちゃんが一緒でよかった!一安心!」
「___さんにできないわけないじゃん!」
「___さんなら、絶対できるでしょ!」
最初は頼られてるみたいで嬉しかったけど、
できることが当たり前になってきて苦しかったな。
これなら中学の時みたいに、カースト下位でいいから
のんびり気ままに誰のことも気にせず
生きていたかった。
“全部全部捨てて遠くへ一人で逃げたい”
そんな妄想、叶うわけもなくただ虚しさが残った。
今日もできることが当たり前の世界で、
誰にも言えない、どこにも書けないことを隠して
必死に耐えて生きていきます。
『どこにも書けないこと』