「月夜にあなたを迎えに行こう」
昔読んだ絵本に書いてあった
黒いマントを被った男の人が迎えにきてくれる
当時は今日かな?明日かな?なんて痛いこと考えたなぁ
ねぇ、黒マントさん
私もう30になっちゃった
今日も月がとても綺麗だけど、やっぱりお迎えは来ないみたい
お気に入りのハンカチも無くすしもう最悪……
「すっ!すみませんおねぇさん!」
ぜはぜはと肩で息をする真っ黒な男の子。膝についた手には私のハンカチが握られていた。
目には見えない、けれど確かにあるもの
3/6 「絆」
今日は豚骨!
朝からそう決めてた……はず、なのに
広がったメニューの片隅で私を魅了する味噌チャーシュー。
だめだめ、朝から豚骨って決めてたんだから!
豚骨に、とっぴんぐで……にたまごを……
「〜〜〜もう!」
ぐびっと水滴が落ちる水を煽って揺れるくらいテーブルに叩きつける。
「すみませーん!!味噌チャーシュー!チャーシューマシで!」
豚骨はまた今度、たまにはメニューに踊らされるのも悪くない。
花を贈ろう
バラを渡すと照れて笑っていた君に
石を贈ろう
遅いと怒った君はとても美しかった
甘いものを贈ろう
実は和菓子の方が好きと言われた時は少し焦ってしまったよ
言葉を贈ろう
今日も変わらず、いや、昨日よりももっと君が好きだと
温かった頬も、柔らかかった手も
冷たくなってしまった、硬くなってしまった石の君となっても
今日も 愛しているよ
あかりをつけましょ ぼんぼりに
おはなをあげましょ もものはな
ごにんばやしの ふえだいこ
きょうは たのしい ひなまつり
きょうは、おねえちゃんがおよめさんになる日。
おひなさまに負けないくらいきれいなおきものをきて
くろいふくをきた人ととおいところへいってしまう。
「おねぇちゃん、きれいだね」
おねえちゃんは泣いていた。
あかちゃんみたいに、かおを真っ赤にして。
「おまえは、好いた人と一緒になるんだよ」
「うん!おねえちゃんみたいにきれいになる!」
いつもはあったかい、おねえちゃんの手がとても、とても冷たかった