同情
「ごめん。」
「いきなりなに?」
貴方に謝られるようなことなんて何もない。
人間が「俺」を忌み嫌うのは仕方のないことだ。
誰だって自分と同じ形をしているくせに違う生き物を怖がるのは当然だろう。
特に俺なんて彼らにとっては全くもって理解のできない化け物にしか見えないだろう。
彼らが当たり前に持っているモノを持たないくせにそれでも生きているのだから。
だからまあこの身体の傷はしょうがないことなのだ。
「なに?とめられなかったから?助けられなかったから?いいよ別に助けなんて求めてないし。」
事実なのに貴方は顔を俯ける。
罪悪感なんて感じる必要はないのに。
そうやって見ないふりもできやしない。
なんて可愛そうな貴方。
誰よりも強大で素晴らしい力を持つ俺と同じ生き物。
人間の役に立つ力を持つが故に人間に受け入れられてしまった異物。
「貴方も俺と同じなのにね。」
ホント可哀想。
人間と同じモノだと思われているなんて。
【表裏一体】
10年後の私から届いた手紙
「まだ生きています」
一言だけ書かれた手紙。
そうか10年も頑張ったのか。
私はそこにたどり着けるのだろうか?
バレンタイン
戦争である。
きたる2月14日そうバレンタイン。
その日にむけて選り取りみどりのチョコレートが世界中から集まってくる。
即ち戦争である。
バレンタイン当日なんて悠長なことは言ってられない。
発売されて直ぐに売り切れるチョコレートなんてざらにある。
2月にはもう手に入らないものもある。
故に戦わねばならぬ。
欲しいもののためには努力を惜しんではいけない。
味も見た目も欲しいと思ったなら躊躇ってはいけない。
買った後悔よりも買わなかった後悔が大きいことは身にしみてわかっているのだから。
さあ、情報ヨシ!財布ヨシ!
いざ出陣じゃ!!
え?誰のため?
もちろん自分のためだが?
【自分チョコ】
誰もがみんな
この世界には魔法が溢れている。
誰もがみんな大なり小なり魔力をもっている。
魔力は血と一緒だ。
足りなくなれば死に至る。
それくらい大切なもの。
だけど俺には魔力がない。
魔法が使えない人間でも魔力はもっている。
でも俺はこれっぽっちも魔力がない。
魔力がなくても生きていける。
いや?生きていないから魔力を必要としないのか?
まあ、いいや。
わかっていることはただひとつ。
俺は皆とは違っていてだからまあ、
生きていくことを許してもらえないということだ。
血塗れになり雨のなか地面に倒れこむ。
誰も助けてはくれない。
だって俺は皆とは違うので。
【特別】
花束
国を救った英雄が花束を買ったらしい。
5本の薔薇の花束。
誰に渡すのだろうか。
家族?恋人?告白でもするのか?
国中が皆ヒソヒソと噂するなか当の英雄本人はふらりと姿を消したまま。
そうして再び見かけたときに花束の行方を尋ねてものらりくらりと答えは返ってこなかった。
いったい英雄から花束を送られたのは誰であったのか。
真相は本人の胸の中。
それと見晴らしのいい崖の上にある慰霊碑しか知らないこと。
【君に捧げる】