「失われた時間」
手を離したのは、私からだ。
だって、あなたの気持ちがわからなくて、
それを問い質す勇気が、私にはなくて。

核心に触れなければ傷つかないと思ったの。
だから、あなたが追いかけてこなかったとき、
こんなにも痛むのは今だけと、言い聞かせた。



今も、こんなに痛いなんて、ね。

「子供のままで」
感情のまま好きと言えたら
どんなにいいだろう。

大人になるほど余計なものが付属されて
たった二文字が呑み込まれてしまう。

そして胸の奥で燻り、炭となるんだ。

「モンシロチョウ」
大きなつばのある帽子に、それはいた。

見つけたときは白いリボンだと思った。
しかし、それはゆっくりと羽を動かし
まるで自分はここにいるぞ、と
アピールしているようだった。



美しい女性の帽子に止まる紋白蝶。
美しいのは彼女か、それとも。

「忘れられない、いつまでも」
あの本の、最後にある一文を読んだ衝撃は
今でも思い出せる。

まさかそんな、でも、これって。

すべてはあの一文に集約されるなんて、
何年経っても読み返しちゃうわけね。

「一年後」
今は、あなたに好きと言えない。
こんな醜い自分じゃ、恥ずかしいから。

胸を張ってあなたの前に立てるように、
昨日より今日、今日より明日、
私は綺麗になるんだ。