私は着物を着た事がない。人生で着物を着たいと言える機会は2度あった。1度は20歳の成人式。智ちゃんはお姉さんの時に作った由緒正しそうな白地に赤い模様の美しい着物だった。私は母の紺色のワンピースを着て出席した。ワンピースの裾に少しほころびがあったが気にしないようにした。2度目に着物を着れる機会は大学の卒業式だった。私以外の女子は全員着物姿で文字通り華やかな式だった。京都という土地柄かどんな柄かどうかより、どの呉服屋さんの着物か、誰が織った着物、帯かを競っているようだったが、私は話しの輪に入らず、ひたすらタクシーを拾ったり動き回って、わざとワンピース姿を目立たないように過ごした。私も1度で良いから着物を着たかったが、でも言い出せなかった。自分のお金で借りる事は出来たが、何故か自分は着てはいけない、そんな晴れがましい物を望んではいけない、と思った。結局私は母に自分の気持ちを微塵も出す事はなかった。最初から最後までニコニコ笑って、むしろ私は着物なんて着たくなかった、という素振りをみせた。きっと母は今でも私が着物を着たいと思ってるなんて、想像だにしてないだろう。私は一生着物を着る機会はないだろう。今の私は着物を着たかった事より、着物を着たいと言えなかった自分が可哀想だと思う。
ごく最近まで月が綺麗だなんて思った事がなかった。中秋の名月だとかお月見だとか、何の意味があるんだろう、くらいにしか思ってなかった。せいぜいお団子を食べて、季節の移ろいを楽しむ姿を演じてきた。だが最近は夜歩く時は真っ先に夜空の月が目に入る自分がいて驚く。実家からの帰り道は日に日に変わる三日月を見ながら、自分が見ている空を兄と共有したくなる。兄も月が綺麗に思うのだろうか?
何も浮かばないが、色とりどりってどんな場面なんだろう?雨の日に色とりどりの傘を眺めるのが好きだ。若い頃は派手な色の傘が気恥ずかしかったのだが、今はむしろ派手な色を選ぶ。しかし好みで選ぶ訳ではない。100%身の安全の為だ。相手の車に見つけて貰いやすい色を身に付ける年頃という訳だ。
初めて書くので、何を書いて良いか分からない。