八色鵺

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8/7/2024, 2:49:24 PM

─── 最初から決まってた ───


勇者として英才教育を受け
祖国を後にし各国で仲間を集め
魔界にある魔王の城へ行く

お馴染みのストーリーに魔族との対峙
全てに意味が無い事を

初めから知っていた

世界の住人は魔族を憎み
魔界の住人は我々を憎んでいる

姿形は違えど所詮は同じだと

魔王とは戦わなかった
その代わり話し合った

そして表向きの結末
勇者一行が魔王を倒し世界に平和が戻った

国王も知らない我々だけの秘密だ

要するに協定を結んだだけ
お互いにとって悪い話にならないように

私は今日も魔界へ足を運び
魔王とチェスをしながら紅茶を飲んでいる


偉大なる神々と大魔王達の戯れの答えは
私には初めから見えていた

8/6/2024, 1:34:18 PM

─── 太陽 ───


太陽とは縁のない生活をしている

この街はどういう原理か常に夜なのだ
朝が来て昼になっても太陽は昇ってこない

月なら出ているがね
その月も太陽が無いと静かに光らない
と言う事は多少の縁はあるのか

街から出れば太陽が昇り沈むのを見られるが
生憎私はこの街が好きでね
余程の用事がない限り外へは行かない

灯りは月明かりと蝋燭で事が足りる
私の研究は勿論
料理も読書も問題なくできるし
この街の婦人方は編み物や縫い物も得意ときた

外が暗いだけで常に静かな街
賑わっていないわけではないんだがな

太陽の代わりに月が常にある街


実に不思議で私には住みやすいところだ

8/5/2024, 2:12:02 PM

─── 鐘の音 ───


この街で生まれ住んでいる僕達には
特別でも何でもない

街の真ん中にある大きくて真っ白な大聖堂
そこにある鐘を観光客は皆口を揃えて褒める

ただの鐘なのにね
なんなら少しうるさいくらいだ

鐘には一応歴史があって
何百年も前に当時の国王が
愛する王妃に贈った品だとか

そんな昔の鐘が今でも現役なのは
すごい事なんだろうな

普段の手入れの賜物だろうが
街の人々は自分達の生活で忙しい
意識しないと手入れの事なんて頭にないだろう


だって鐘は僕達の生活の一部なのだから

それが無くなるだなんて考えた事もなかった

8/4/2024, 2:16:22 PM

─── つまらないことでも ───


そのフィルター外してみたらどう

連れに面と向かって突然言われた
なんの事かわからず聞き返すと

いつも退屈そうな顔してる
だから一度そのフィルターを外して
別の角度から見てみたらどうかと思って
君自身の日常をね

いや自分にはこれが普通で当たり前で
まさに日常なんだけど

そう答えると同時に笑いながら連れは立ち上がり
私の手を取り店を飛び出す


とりあえず頭空っぽにして
楽しむ事だけに集中する
じゃ行こうか


言われるがまま
色んな場所へ連れて行かれた

片っ端から遊び尽くす
小さな子供がするような遊びまで


頭を空っぽにして

8/3/2024, 1:32:33 PM

─── 目が覚めるまでに ───


両親の目と言葉はマジだった

なんでアタシまで行かなきゃいけないの
仕事なんだからパパとママだけでいいじゃん
アタシはグランマの家に行く
てゆかウチじゃなくて他の家にしてよ

仲の良い友達
お気に入りのショップ
いつも可愛く仕上げてくれるサロン

全部手離せってジョーダンきつい

人類の未来や進歩なんて
今日を楽しく生きたいアタシにはカンケーない

マジ無理

散々ケンカして駄々捏ねてみたけどダメだった
結局アタシも行く羽目になっちゃった


コールドスリープが解除されるまで
今の可愛いネイルがもってればいいな

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